死の偽装

 カイルの死の要因に自分の力のなさがあったと思い、嘆き悲しむミヨモにティアとジャンが慰めと励ましの言葉をかけ、自分なりにカイルの死を受け止める事を決意するとどこからともなく声が聞こえ、その声にニラダ達は驚く。


「この声は……」

「ま、まさか……」


 ニラダ達は聞き覚えのある声を聞いて、まさかとは思いながらも恐る恐る高台に登ってくる声の主を見て驚きを隠せないでいた。


「カ、カイルさん⁉」

「え、ええええ⁉」

「途中からだけどみんなが私の死を悼んでいたのが聞こえてね、中々声をかけづらかったよ」

「カイルさん。生きて、生きていたんですね……」


 誰もがカイルはテリソンとの戦いで戦死したと思っており、特に先程まで悲しみのあまり泣きじゃくっていたミヨモは反動のあまりまた泣き出してしまう。


「良かった、生きていてくれて……」

「まいったな、これじゃあまた私が泣かしたみたいだ」

「だけどカイルさん、確かにテリソンはカイルさんを仕留めたと言っていましたがいったいどういうことですか?」

「それはだね、まあ順を追って話すとしよう、私はテリソンとの一騎打ちに持ち込むことには成功したが、奴の力はすさまじく倒す事は出来ないと悟ったね」


 カイルはテリソンとの一騎打ちに持ち込む事に成功するものの、自力では倒せないと悟り、別の作戦を実行すると決意したのだ。


「それでもせめて君達がハイバイに戻るまで時間を稼ぐ必要もあったし、作戦の為には奴に本気を出させる必要もあったんだ」

「作戦?どんな作戦なんですか?」

「私自身の死を偽装する事だ、私の持つアイテムに敵に自分の死を錯覚させるアイテムがあったからな」

「じゃあ、あらかじめ自分が死ぬことはないとふんで、時間稼ぎを買って出たんですね」

「ああ、だがいくつか誤算が生じた」

「誤算?」


 一見、テリソンを欺く事に成功したかに見えたが、実はカイルにはある誤算があり、それについて話す。


「そのアイテムは命の人形と言い、防御用のアイテムなんだが、それを破壊した魔法の余剰ダメージを受けてしまい、私は命は取り留めたものの、すぐにその場から動けないでいた、すぐに君達に合流するつもりではあったが」

「そうだったんですね……」

「でも待ってください!カイルさんは治癒魔法は使えなかったはずです!どうやってその傷を治したんですか?」

「持っている回復アイテムを使ったがそれでも不十分でね、そこで達に助けられてね」

達?」


 ニラダがあの人達という言葉に疑問を抱くと、再度どこからともなく声が聞こえる。


「はあ、ようやく出ていくタイミングか、やれやれだな」

「‼どうして……」


 カイルを救出した人物の姿に驚きを隠せないでいたニラダ、その人物の正体とは?

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