工房の活気

ゲンはカールがニラダに対して作った剣を勇者の剣には及ばないまでも1人で強力な剣を作り上げた事に称賛の言葉を与えるとともに、工房を引き継いでほしいと訴え、それの訴えに対しカールが返答をする。


「親方、大変ありがたいんですが、そのお話はお断りします」

「そうか、やっぱり最初に言った通り、独立か、他の鍛冶師の元で修行するんだな」

「親方、親方がこの先の僕達の事を考えているという事が分かって、僕も気が変わりました」

「何?」


 カールが気が変わったと言ってゲンは驚くが、その内容についてもカールは話し始める。


「親方が職人として引退を考えているならそれは仕方ありません、でも僕にはまだ工房を引き継ぐのも早いかもしれません」

「何が言いてえ?」

「工房はギグさんに任せてはどうですか?僕はまだギグさんの元で武器作りをやっていきます」

「え?お、俺が工房を……」


 ギグという職人が突如カールより工房を任してはどうかという提案に驚く中、ゲンも言葉を発する。


「確かにギグは俺の今残っている弟子の中では一番弟子だが、あんな剣は作れるかどうか……」

「そうだぞ、カール、それにお前さっき武器作りって言ってたけど」

「ギグさんが引き継いだ工房でもう1度武器を作りましょうよ、それで親方は武器を作れなくても助言する事はできるはずです」

「カール、俺はもう武器も、そして冒険者の依頼なんてまっぴらごめんだと思っていた、それでもお前らをこのまま腐らしちゃいけねえと思っていろいろやって来たつもりだった」


 ゲンは武器作り、そして冒険者の依頼を受けないスタンスを貫きながらも自分の元に残った弟子に何かできないかと考えていた事を話し、更に今回のカールについての行動について言及する。


「それをお前が剣1本で覆しやがった、まったくてめえで作った剣で武器職人の道が閉ざされたのに、弟子の作った剣で俺の教えを残してえって思うなんて、結局俺は死ぬまで武器から離れられねえんだな」

「親方、それって……」

「てめえの言う通りにするってこったよ、ギグ、今日からお前に工房を任す、武器でもなんでも、どんな依頼人でも作ってやれ!」

「え?、は、はい!」

「それからなあカール、ここまで俺を振り回したんだ、情けねえ武器を作ったらたたき出してやるから覚悟しとけよ!」

「はい!」

「てめえらとっとと準備しやがれ、街中もかけまわってこい!武器作りを再開したと!」


 カールの強い思いが実を結び、再度工房には活気が戻って行ったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る