工房を

 ニラダが鉄くずを斬った感覚を言葉にするが、ミヨモ達はその意味が分からずいたが、剣そのもののすごさは理解した。


 理解が追い付いてないミヨモ達にニラダは更にかみ砕いた言葉で説明をしようとする。


「えっと、そうだな、俺が鉄くずを斬りたいと思ったら斬れたって感じかな」

「?んーーー、ますます分からないよーーー」

「そうね、でもすごい剣だって事だけは分かったわ」

「おお、そうだ、それで十分なんじゃないのか」


 ニラダの発言自体は意味が理解しにくかったが、新たな剣の切れ味やニラダの使い勝手は良さそうな事はミヨモ達にも伝わっており、とりあえず一同の間では良かったことが認識される。


 一同がやりとりをしているとカールがニラダに声をかける。


「ニラダさん……」

「あ、そうですね……はい……」


 短い言葉のやり取りだがニラダはカールの言わんとする事を理解し、剣をカールに手渡し、カールはゲンに剣を見せる。


「親方、これが僕の作った剣です」


 カールの言葉を受けて無言でゲンは剣を受け取り、剣を隅から隅まで見ており、ニラダ達にも緊張が走る。


「なるほどな、店で売る物としては一級品だが、所々まだ粗さが目立つな」

「そうですか……」

「オリハルコンを使ってねえ事を差し引いたとしてもできは前に作った勇者の剣には及ばねえな」

「そうですか、やっぱり僕にはまだ早かったんですね……」

「だが、お前はこれ程の剣をたった1人で作り遂げた、それに何より使い手がまるで身体の一部のような感覚を口にしやがった」

「え?」

「カール、鍛冶の中で学ぶ事は多いが、俺がお前に教えられることはもうねえ」


 教えられることはもうないと言ったゲンは更にカールに対して言葉をぶつける。


「カール、実の事を言うと、この工房を売るつもりでいたんだ」

「え?そうだったんですか」


 ゲンの言葉にカールだけではなく他の職人も驚きを隠せないでいた。


「待ってくだせえ、それって俺達を見捨てるつもりだったんですかい」

「依頼が減っていたのはお前達も知っていただろう、そんな工房にいてもお前達の為にならねえだろう」

「それはそうですけど……」

「待ってください、親方偶然ですけどここ最近いろんな鍛冶師さんとお話しているのを見たんですけど、何かと思っていたんですがひょっとして……」

「ああ、お前達の新しい受け入れ先を探していた、全員を1つの所には無理だがいろんな所にな、だが気が変わった」

「気が変わった?」

「カール、これ程の武器を作れるんだ、お前がこの工房を引き継いでくれ!」


 突然、カールに工房を継がせると宣言するゲン、果たしてカールは?

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