完成してから
カールがニラダの剣にアビジンを加え、打ち込みや火入れを何度も繰り返していると翌日の昼頃に改めて取りに来て欲しいと発言し、ニラダ達『成長しあう者達』は一度工房をあとにする。
宿に戻る道中でミヨモがニラダに声をかける。
「ねえ、ニラダ君、剣が完成したらどうしようと思っているの?」
「そうだな、ミヨモ達の装備を受け取り、ミヨモの言うようにカイルさんの剣の修行を受けようと思っている」
「覚えていてくれたんだ、この街に来てからいろいろあったし、忘れているかと思ったよ、っていうか私も忘れそうだった」
「良かった、俺が先に思い出せて」
ニラダは以前ミヨモから提案されていたAランク冒険者であるカイルからの修行を受けた方が良いと考えており、剣の完成後は修行を受ける事を決めていたのだ。
「あ、でもニラダ、カイルさんがどこか別の街、ひょっとしたら国も越えているかもしれないわ」
「一度、ギルドで行先は聞くつもりだし、そこでもし他の国に行った事が分かればまたクエストの日々だな」
「アビジンが加工された剣だし、強力だとは思うけど、しっかり使いこなす為に別の人でもいいから剣の修行を受けた方がいいと思うわ」
「うん、俺もそう思っている」
ティアよりカイルからの修行が受けられない場合でも別で剣の師匠を探すのが良いのではと言われてニラダもそう考えている事を告げる。
「まあいずれにしてもカールが剣を完成させることを祈るしかないな、剣が壊れちまったらまた考え直さねえとな」
「ああ、だけどギガングやズームといった魔王軍の元幹部は他にもいるだろうし、結局のところ強力な武器は必要なんだけどね」
「補助魔法とスキル、それに強い武器がありゃあますますとんでもない奴になりそうだな」
「まあ、そのSランクっていう誰が見てもとんでもない奴、いやとんでもない奴らを目指しているんだけどね」
「俺達もそのとんでもない奴らに含まれるわけか、ミヨモやティアのように一級品の魔法を使う奴らはともかく、俺なんて盗賊なんだけどな」
「ジャンはとんでもない盗賊を目指せばいいんじゃないのか?」
「本物の盗賊になっちまったら冒険者は無理だけどな」
「ハハハ、そうだな」
盗賊がSランクパーティーという違和感を口にするがニラダより冗談とも本気ともとれる言葉を聞いて軽口をたたき合い、一同は宿に到着し、一夜を明かすと昼頃まで街中で時間をつぶし、再度ゲンの工房へと向かう事になった。果たして剣は無事完成したのか?
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