カールの決断

 カールは親方であるゲンがもう武器を作れなくてもせめて自分達だけはその志を引き継げないかと言うが、ゲン自身はそんなものを持っておらず、冒険者の依頼で勇者の剣を作ったのは功名心に負けたに過ぎないと自虐し、その話を詳しくする。


「でも親方、あの時は十分に工房は賑わっていたはずです、どんな功名心が親方にあったっていうんですか?」

「カール、俺は確かにアビジンを扱い、強い武器を作っていった」

「どれも評判が良かったじゃないですか、アビジン抜きにしても親方の腕前は一流でしたよ」

「カール、お前が来る前の話だが、俺は親父のところをでてこのビーズの街で工房を開いたんだ」


 父に反発し、父の元を離れてからビーズで工房を開き独立する事を決意したが、その後の心情を語った。


「お前は評判の良かった武器があると言ったがよ、親父と比べると俺を訪れて武器を作って欲しいって客は少なかったな、冒険者の居る街にも関わらずだぜ」

「親方、それは単にお客の取り合いが他の工房と起きただけなんじゃ」

「つまり、俺の評価はその他の鍛冶師とそう変わんねえって事だろ、親父に反発してまで工房を開いたのに、結局親父ぬきじゃダメなのかって時にあの話が来た」

「あの話。まさか?」


 あの話に反応を示したカールにゲンは詳しく話し始める。


「そうだ勇者の剣の依頼だ、これで一気に他の工房と差をつけられるそう思い、お前らとも協力して勇者の剣を作った、だが……」

「その冒険者は剣を売ってしまい、それに対し親方は怒って殴りましたよね、それは誇りを汚されたからだと思っていましたが」

「誇りを汚された?はん、俺は奴に自分の評判を間接的に落とされた、それがどうしても許せなかった」

「……」

「カール、結局俺もあの冒険者もその程度の奴だったって事だ。そっから冒険者を見るとくだらねえ功名心に負けた俺自身を思い出すようになっちまった」

「親方……」

「だがこの街を出て、新しい工房も開けねえ、中途半端な奴なんだよ俺は……、それに気づいた奴はみんな出ていっちまった」

「親方それは……」

「お前がそこまで武器作りに情熱があるんだったら、志もなにもねえ俺の元から去った方がいい、そのうえでそいつらに剣を作ってやればいいじゃねえか」


 少しづつ声が弱弱しくなっていくゲンに対し、カールは今までの言葉を受けて返答をする。


「親方の気持ちは分かりました、僕はこの工房を出ていきます!」

「カールさん!」

「その代わり僕の武器作り、せめてそれだけは見届けてください!」


 工房を出ると宣言するカール!だけど自分の武器作りを見届けて欲しいと強く訴えるのであった。

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