不安の軽減
ニラダはドットの師匠であるゴーンとその息子であるゲンの親子関係は鍛冶に対する考え方の違いで亀裂が入った事をドットより聞かされていたが、ゴーンの教えに忠実であったドットもまたゲンとの関係が悪い恐れがある事を危惧するが、とりあえずは行かなければならないと考え馬車に乗り込む。
馬車の移動中にニラダが心配する点についてジャンが声をかける。
「なあ、ニラダ、ドットの旦那がそのゲンって鍛冶師の才能に嫉妬していたのは確かだろうけど、仲が悪かったらわざわざお前に紹介するか?」
「私もそう思う、あのドットさんが昔はともかく今も嫌いな人をわざわざニラダ君に紹介するとは思わないけど」
「だけど、こうも考えられないか、あくまでおじさんが紹介したいのはゴーンさんだけど、おじさんの言うように亡くなっているか、そうでなくても鍛冶ができる状況じゃない為の保険として紹介しただけとも」
「旦那の知っているアビジンを使える鍛冶師が2人しかいねえとなったらとりあえず2人紹介するって事か……」
ニラダはゲンに関してはドットがゴーンに何かあった場合の保険としての紹介と考えるが、今度はミヨモから尋ねられる。
「でもニラダ君、そう思ったなら、どうしてドットさんに聞かなかったの?本当の仲を」
「すぐには考えつかなかったし、もしおじさんが自分の感情を抜きに俺に紹介してくれたとしたら、とてもじゃないけどそんな事を聞くのは悪い気がしてさ」
「そうなの、ニラダ君、いつもドットさんとはケンカしてるけどやっぱり仲いいんだね」
ミヨモの屈託のない笑顔と言葉の内容にニラダは照れて言葉を失い、そんなニラダをよそにジャンはある提案をする。
「なあニラダ、ドットの旦那の知り合いって事を伏せてその息子に頼めば問題はないんじゃないのか」
「だけど、俺が冒険者、そしてアビジンを手に入れた経緯、何よりゴーンさんやゲンさんに行きついた経緯を話すのにおじさんの名前を言わないのは避けて通れないだろう」
「馬車に乗る前にも言ったけど行かないと分からない事もあるし、アビジンを扱える鍛冶師は他にもいるかもしれないから、あまり思いつめない方がいいわ」
「ティア……」
「ミヨモさんの言う通りだよ、ドットさんとゲンさんが仲良くないのはニラダ君が不安に感じるのは分かるけど、今回の事がダメでもまた鍛冶師を探せばいいんだから」
「そうだな、なんか俺すぐに剣を強化しなくちゃと焦っていたかも」
「まあ、そうなったら俺達が新装備でお前の分も活躍するからよ」
不安がわずかながらに軽減し、馬車はパックの街に到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます