寄生
「……え、なんか階段の先埋め立てられてるんだけど。」
千留さんはそう言って、目を丸くする。
私たちが階段を登り切った先には、ただ大きい木の壁があるだけだった。
……敵の館の風景としては、なんだかシュールで面白い。
面白いのはいいんだが、政府軍のお偉いさんを倒したい身としては困る。
「……どうするんですか、これ。」
「え、どうしようね!」
…千留さんは相変わらず頼りにならなそうだ。
試行錯誤する彼を見、私はため息をつくと、後ろを振り返る……
刹那、目の前に鮮烈な蛍光色の光が散った。
反射的に手でそれを払う。
すると、右手に感じたことのない、不快な痛みが走った。
「……はぁっ!?」
手の筋一本一本が焼けこげていくような、もしくは神経痛を重症化したような痛みに、私は思わず声を上げる。
慌てて右手を見たが、特に目立った外傷はない。
信じられない気持ちでさっきの光が浮いていた場所を見ると、そこには顔面に何か機械のようなものを取り付けられた、変わり果てた数十名の政府軍がいた。
「……は、きもっ」
同じ人間とは思えない見た目と登場の仕方に、私は率直にそんな感想を言う。
和風な館には、あまり似つかわしくない見た目だった。
こういうのってSFの世界に住んでるべきじゃないのかよ。気持ち悪い。
そんなことを思った次の瞬間、政府軍の頭についた機械からコードのようなものが伸び、私の喉の奥を切り裂いた。
今度は声も出なかった。
全身をびりびりとした感覚が這う。
その感覚に操られるように、私は血を吐いた。
反射的に、血まみれでどろどろした喉に手を突っ込む。
そして、なんとかコードを探り当てると、引っ張って無理やり体外に出した。
だが、コードは先端に鉤爪のようなものがついていたらしく、取ろうとした時に喉の中が切れてさっきよりも酷い状態になった。
ぐしゃぐしゃの喉に手を当てながらも、コードをどこかに投げ捨てようと触る。
その瞬間、全身を針で刺されたような痛みがはしった。
……感電しているんだ。
わかったのはかなり時間が経ってからだった。
目の前の政府軍は無言で刀を出し、抵抗ができない私の脳天を貫く。
私の口から奇声が漏れた。
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