例えば爪を整えるとか

ふみづき透明

例えば爪を整えるとか

氷河期と呼ばれる孤独呼ばれない孤独まじわらないで夕暮れ


この世では愛がすべてと言われつつ探す暇すらない日常で


「生命は地球より重い」言いながら一年三百万で数える


生存の割に合わないコストたち、水道代とか税金だとか


正常性バイアスの意味聞かれてて「けらけら笑うということ」と説く


職場から最寄りの飯はコンビニで 一番安いパスタを食べる


ケチんぼの親にいじめられていた子 生命維持費を恨んで生きる


闇バイト逆転のためと言う人の夢があるとこに共感できない


お天気の話のように告げられる疫病患者の数の増減


コロナ禍ですべて奪われきった人すべて滅んでほしかった人


転職で流されてきた現職は誰もおしゃべりしなくて、良いとこ


ガス代の通知書濡れて乾いてる雨上がりの空とおい青色


テトリスは不安軽減の効能を認められており、無為な休日


生きていくための雑務を重ねてく 例えば爪を整えるとか


この世では愛がすべてと言われつつそもそも人間なんて嫌いで


じゃむ瓶のどろりあかくて濃く、薄く、平等なんてせかいのどこに


七年前アリスは十七歳だったエプロンドレスに染み込んだ灰


地球では生きていけないわたしたち静かの海で息をまだして


殺人を忌避しながらも共感をする人たちと、夏の銃声


チャタリングゆらゆらしてる性別のわたしが透明になる街並み

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