第24話 スキルとは
【第24話】スキルとは
「すいません……」
セラフィーが放った炎の渦の魔法は、全ての魔物を巻き込み焼き尽くした。
戦闘が終わってもセラフィーの手足の痺れは未だとれず、今は涼がセラフィーをおぶって歩いている。
「別に気にするな。どっかで休憩しよう。……それで? お前はいつまで機嫌悪くしてんだ」
プクゥと頬を膨らまして不機嫌なイランが涼をギロッとにらみつける。
あからさまに怒りの表情を見せるイランの身体の色は水色から少し黒ずんでおり、焦げていた。
その理由は、セラフィーの魔法の巻き添えをくらったからだ。その判断をしたのは涼、当然怒りの矛先は本人に向いた。
「直撃しなかったからよかっただろ」
「よくなーい! あと少し逃げるのが遅かったらセラフィーの魔法で死んでたんだよ!」
「お前丈夫だから死なないだろ」
「そう言う問題じゃないんだよ!」
それにお前はもう死んでるだろというツッコミを入れようかと思ったが、さらにキレそうなのでやめた。
「イランさん。ごめんなさい……」
「あ~セラフィーは悪くない。悪くないよ~悪いのは……」
お前だよという眼光で涼を見るが、肝心の涼はというとそっぽを向いて無視していた。
「毒もくらってたらやばかったよ……」
「あの魔物が出す毒は痺れ毒だけだから別に命に害は無いぞ」
「いや……痺れてたらセラフィーの魔法避けられなかったじゃん……」
その会話に疑問を持ったのかセラフィーが涼に質問した。
「何で分かるんですか?」
(ああ、そういや言ってなかったな……これを機に話してみるか)
涼は、この世界の生物のステータスを見れることを道中説明した。
セラフィーはそのスキルに驚いていた。
なんでも、過去にそういった人物に会ったことがないらしい。
「でも私は、村からほとんど出たことがなかったのでそういう人は他に居るかもですね。ですが、そもそもスキルなんてものが存在すること自体驚きでした……しかも名前やレベルまで……」
その発言からするに、自分にスキルがあることすらわからなかったらしい。
普段の日常でも使っていないところを見ると、スキルというのは認識されていないのだろうか?
(まぁそれは現実でも同じか……絵が上手い奴、足が速い奴。ステータスは見えなくてもそういうスキルがあることはわかる)
涼のスキルはそれが文字となって見えているだけの話。
「あ、もしかして私のも見えてます?」
「ん? ああ、見えてる」
「なんか恥ずかしいですね……」
確かに、自分のスキルや名前が見えるのは気分がいい話じゃない。
「ねぇ僕のスキルとレベルは?」
「さぁな」
「え? どういうこと? 無いってか。僕にはスキルもレベルも無いってか!」
ギャーギャーと喚くイランを【情報】で見てみるが、初めて会った時同様に、ステータスがぼやけていて見れない。
(何でこいつだけ……)
この現象は今のところイランだけだ。霊ということが関係しているのだろうか。そう考えるが、考えても分からないし、今のところ別に困っている訳ではないと思い考えるのをやめる。
「でも便利ですよね。それがあれば、敵の弱点が丸わかりじゃないですか」
「それは時と場合によるな」
「え?」
敵のステータスが分かっても、敵の戦い方がわかるわけではない。
しかも、スキルが分かった所で、それを対策できるものが無ければ意味がない。
例えば【敵の防御力が上昇する】というスキルが分かったところで、だからどうした? という状況になる。
結局のところ相手のレベルがわかること以外、そんなに使い道はない。と前まで思っていた。
(まぁ、さっきの魔物に毒があることが分かったのは助かったかな。前と違って今は1人で戦っているわけじゃない。俺とは別の戦いができる奴が今は居る。ならこのスキルは今まで以上に重要になってくるかもな)
「あそこ、休めそうじゃない?」
イランが見ている先に、小さな洞窟っぽい場所を発見した。
「そうだな。休憩は……あそこでいいだろ」
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沼地を抜けるとそこは、石ころやくぼみが多いデコボコした道が続いていた。
沼地よりはましかも知れないが、また足場の悪いエリアが続く。
しかし、涼はここで休憩を選択した。理由はセラフィーの身の安全を優先したからだ。
(この先は山を登ることになる。なら休憩するならここがラストだ……)
「とりあえず、セラフィーが回復するまで休もう」
「ありがとうございます」
あの1件からセラフィーはちょくちょく笑顔を見せるようになった。こうしてよく見ると可愛らしい女の子だと感じた。
(普通に現実に居る人間より、顔が整っているな。エルフだからか? いやよく見ればイランも顔が整っているか……だとするとここが現実の世界じゃないからかもな)
日本のアニメや漫画などの登場人物なんかは万人受けするために、容姿が整っている作品が多い。イランやセラフィーはそれと近い何かを感じた。
「次はどこに行くの?」
顔について考えているとイランが次の目的地について質問してきた。
「ああ、この先にある山に登る」
「結局山には登るのね……」
本来、登る筈だった山はハプニングがあり、登ることができなかった。しかし街の場所は、山の向こう側にある。
結局登らなければ辿り着けない。
貰った地図を見る限り、街に行ける山は2つだけ。
つまり、今登ろうとしている山が登れない。となってしまうと、かなりの遠回りをして街に行くことになってしまう。そうなれば何ヵ月かかるかは分からない。それだけは何としても避けたかった。
「あ、薪が無くなりそう……僕取ってくるよ」
そう言ってどこかに行ってしまったイラン。残された涼とセラフィーに沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのはセラフィーだった。
「何も聞かないんですか?」
おそらく、
だが、涼にはそんなことはどうでもよかった。
「聞いてほしいのか?」
「え、いえ……」
「なら、別に聞かなくてもいいだろ」
セラフィーは少し複雑そうな顔で涼を見ていた。
「でも、よく気付きましたね……」
「……まぁな」
「何で分かったんですか?」
「……ちょっと前の俺と同じ目をしていたからだ」
「え?」
その時、遠くから薪を抱えて走ってくるイランの姿が見えた。なにか聞きたそうな顔をしていたセラフィーだったが、イランを見た瞬間、口をつぐんだ。
「治ったら出発するぞ。ちゃんと休んどけよ」
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