最強水系能力者の水色さんと恋する幼馴染

常世田健人

序章

序章


 超能力を手に入れたらどんな生活になるのか――

誰しも一度は考えたことがあると思う。

 あくまでも夢物語ということは間違いない。

実際に超能力を持った人を見たことがないし、テレビの検証番組をみても結局のところ曖昧なまま終わってしまう。

 それでも――そんな空想を思い描いてしまうのは、現実では到底なし得ないことをいとも簡単に行えてしまうという全能感が故だろう。

 ただ、一度ここで立ち止まって考えて欲しい。

 例えば遥か昔、自動車が存在しなかった時――馬に乗る以上の方法で移動速度を速めるということが超能力ではなかったか。

 例えば遙か昔、飛行機が存在しなかった時――空を飛ぶことそれ自体が超能力ではなかったか。

 だからこそ、僕は、こう思う。

 人間は、超能力を現実におとしこむことが出来る唯一の存在だと。

 だからこそ、僕は、一生懸命頑張って勉強をしている。

いつか必ず超能力めいた発明を成し遂げ、空想を現実にした上で幸せになってみせると。

 そう、思っていた、筈なのに――

 実際に『超能力』を目の当たりにしてしまうと――

そんな気は、失せてしまった。

 雲一つない青空の下、河原の傍で制服姿の女子高生が腕を動かしている。


 その動きに合わせて、水が、宙を舞っていた。


「何、あれ……」

 隣で撮影をしている幼馴染が唖然としてしまっている。

 同様の状態の僕が、彼女の問いに対して答えられる筈もない。

 この時この場所に来なければ、この先の人生は堅実なものになっていただろう。

 ただ、知ってしまったのならば仕方がない。

 こんな凄まじい現象を放っておける訳がなかった。

「とりあえず、声をかけてみよう」

 話はそこからだ。

 だから僕は河原へと近づく。

 彼女――柳(やなぎ)水色(みずいろ)に声をかけるために――

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