工場がフル稼働
トンビが空を舞い上がる。
リアルワールドから
フロンティアまで長く虹がかかっていた。
霧雨が穏やかに降り続いていた。
建物と建物の間には大きな蜘蛛の巣が
はりめぐされていた。
蜘蛛はどこに行ってしまったか
検討がつかない。
株式会社Spoonのスプーン工場には、
ブレーメンと名乗るメンバー全員が
レインボースプーンの制作に携わっていた。
今回から会社名も入れようと英語でSPOONと
掘り出されていた.
「これで合っていますか?」
ガコンガコンと機械音が鳴り響く空間で
リアムはルークに確認した。
「はい、問題ないです。
箱に梱包してください。
それは通販専用のパッケージで。」
「了解です。」
どんな仕事にも真面目に取り組むリアムは、
耳をぐわんぐわん動かしながら、フットワーク軽く作業していた。
オリヴァは、
スプーンを最後に丁寧にフロスで拭いて
磨く担当だった。
意外と単純作業も悪くないと思った。
クレアは、デザイン担当でボタンひとつで
レインボーの角度を変更できた。
さらにレインボーの他に動物柄、
幾何学模様など様々な模様にチェンジ
していた。
アシェルはできあがったスプーンの箱をさらに段ボールに詰めて、トラックに運び入れる担当だった。
そして、そのまま配送する。
もう、アーティストよりも工場作業員に
なっていた。
時々パソコンやスマホを確認して、
自分たちが配信してる再生数を見ていた。
地味に数字が増えているのがわかる。
3時間に1本のペースで10ずつ増えたが、
気が遠くなる数字だった。
4人はあまり期待してなかった。
今は、このスプーンを作って売るの作業に没頭していて、音楽にはかけ離れた生活をしていた。
地味に稼ぐことを選ぶのかと内心自問自答しながら、やり過ごす。
それでも、スプーンの発注は止まらなかった。
融資を受けていた銀行も
ちょっとずつ売り上げが伸びていることに
喜んでいた。
ルークはこんなんじゃない。
何か違う気がすると、ボスに話に行く。
「……こんなこと言うのも
変かなと思うんですけど、
この現状維持感、なんだか良くない
気がするんですが。」
「え?
何のこと?
スプーンの売り上げ、
好調らしいじゃん?
アーティストの方はまだ業績あげて
ないけど、スプーンで儲かってますって
感じよね。
そりゃ、会場の手配しないで、
動画配信するだけだからコストも
かからないし、
レッスン料も個人でできるように
なったし、投資する部分ないよね。
いいんじゃない?赤字でもなければ、
黒字でもないけども。」
「ボス!!
ぬるま湯に浸からないでください。
本来の目的忘れてません?」
「平凡とか安定求めてはダメなの?」
ルークはためいきをつく。
「会社は、どんどん追求していくべきです。
どうしたら、儲かるかとか。
どうしたら、メンバーが生き生きと
過ごせるかとか。
今のままでは、アーティストではなく
ある意味廃人。
ひきこもりの工場作業員になります。
おてんとうさん見せましょう。
会場、せっかくだから
ビーチボールで盛り上がった海辺で
バンド、披露しましょう。」
ルークはメンバー4人の生活感が
だんだんネガティブ思考になりつつ
あった。
太陽に浴びず、
ずっと部屋の中で黙々とスプーン作りは
まずいなっと自分で提案したわりに
後悔していた。
何がよろしくないかと。
会話をしなくなったことが良くないと。
メンバーのコミニュケーションも少ない。
明らかによくない方向になっていることに
焦りを見せたルークは、
元気を出してもらおうと提案する。
綺麗な砂浜の上のステージに行くと、
メンバーは久しぶりに外での活動に
喜んでいた。
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