なんたる屈辱


「すいません、ジェマンドさん!」


 レオンとノア、そして

 ジェマンドの3人が談笑している

 中にリアムは声をかけた。


 盛り上がっている会話に

 なんで入ってくるんだよというような

 ものすごく嫌な態度を取られた。


「あ?」


「すいません、

 お話に盛り上がってるところに 

 本当、申し訳ないです。」


「あ、いや、別に良いんだけど。」


 ジェマンドは建前な態度を取る。

 

「あの〜

 今回の舞台【うさぎとかめ】の

 うさぎ役は、決まっていたん

 でしょうか。」


「……それは、1週間後に

 連絡しますって言いましたよね?」


「え、あ、はい。

 そうなんですが、近くいた

 ライアンさんとジョージさんが

 アンケートの配役に決まったって

 さっき聞きました。

 うさぎも決まってるのかなと

 思いまして…。」


 ジェマンドは壁の方に体を向けて

 リアムに聞こえない舌打ちをした。


「あ、あの〜。」



「あー、聞こえちゃいましたか??」


 営業スマイルのようにニコニコと

 いきなり空気を変えるジェマンド。

 リアムは変な感じがした。


「は、はい。」


「そうなんですよ。

 もう、うさぎとかめのうさぎ役は

 ここにいらっしゃるレオンさんって

 前から決めておりました。」



「前から?」



 背中が何だかゾワゾワする。



「本当は自然の流れで

 合否を感じて欲しかったんですが、

 はっきり聞きたいですか?」



 何だろう。

 この時点で明らかに結果が見えてくる。


 そう思いながらも

 聞き出そうとするリアム。



「あ、はい。お願いします。」



「面と向かって言うのは

 失礼に当たるかなとも思いましたが

 とりあえずは応募していただき

 ありがとうございました。

 エントリーシートや模擬試験を

 拝見して、厳正な審査の結果は

 大変申し訳ないのですが、

 今回は見送りさせていただく運びと

 なりました。


 今後のリアム様のご活躍を

 お祈りいたしております。」


 ペコっとお辞儀をして、ニヤリと笑う

 ジェマンド。


 よく言う、お祈りメールもしくは

 お祈り手紙を直接言われるパターンだ。


 ここまで言われると心がガラスのように

 バリバリと壊れていくのが分かる。


 それを言われて数分は

 体が硬直して

 何も言えなかった。



「はっきり言わせてもらうんですが、

 諦めてもいいんじゃないです?


 気づきませんか?

 才能がないってことに。


 適当に応募されていましたよね?


 ここはプロの活躍するところなので。」



 太ももの横にあった

 手をギュッと握りしめた。

 

 長い耳がくるんと垂れる。




「ハハハ…そうですよね。

 すぐ結果が聞けて良かったです。

 ありがとうございます。」



 リアム以外のスタッフや応募者たちは

 いつの間にかあっという間に

 いなくなっていた。


 最後にスタジオを出ると

 黄色い鳥がビューンと飛んでいく。


 リアムは全然気にせずに通り過ぎていく。


「ちょっとー、気づいてー。」


 ひよこのルークはリアムを追いかけた。


「?」


「私、こういうものです。」


電子名刺を表示させた。

株式会社SPOON ルークと書かれていた。


「ルーク?」


「そう。あなたを救いに来ました。

 スプーンだけに。


 ちなみにこちら、当社の大人気

 レインボースプーンです。

 いかがですか?」


 差し出されたスプーンをみつめたが、

 今は興味が全然湧かない。

 食欲もないからか。


「我が社があなたを救うんです。

 悪いようにはしません。

 ぜひ、着いてきてほしいですが。」


「はあ…。」


 うまい話には裏があるとはよく言うが、

 怪しい勧誘かと思いながら、リアムはルークの跡をとりあえず着いていくことにした。


オーディションも終わり、何かするって訳でもなかったため、暇つぶしにちょうどいいなと思った。


気持ちの落ち込み度は上がってはいないが、

少しでも救ってくれるならと

考えた。


ルークはニコニコとリアムを飛びながら

株式会社SPOONの本社へ向かう。



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