天気が変わるのは…

さんさんと光輝く太陽に

動物でもない人間でもない

虹色の羽根を生やした

女の子が母の手伝いをしていた。


ただ広い草原の真ん中に

ログハウスがあった。


外には柵が立てられて

牛舎があった。


牛3頭が草をもぐもぐと食べている。



鼻歌を歌いながら、

洗濯物のタオルを物干し竿に干していた。


「クレア、これもあるから

 干してもらえる?」


「はーい。」


 クレアの母のフライアは、

 洗濯を終えた服をクレアに渡した。


 ご機嫌にバスタオルをかけて、

 昨日着たお気に入りのワンピースを

 ハンガーにかけて干していた。


「そういえば、クレア。

 前から気になっていたオーディションが

 あるみたいだけど、

 受けてみたらどう?」


「え、なんの話?」


 フライアは、昨日受けポストに入っていた

 オーディションのチラシを渡した。


「これって、リアルワールドの

 舞台じゃない?!

 【赤ずきん】の女の子を

 募集してるわ。

 やってみようかな。」


「やってみたらいいわよ。

 家のことは私が何とか

 するから行っておいで。」


家畜の世話で忙しくしているクレアの家は

幼い頃に父を亡くして、

母と2人きりで過ごしていた。


畑の仕事や、牛や、鳥の世話をしながら

毎日休みもなく、忙しくしていた。


「でも、毎日の仕事が…

 お母さん1人になってしまうでしょう?」


「大丈夫、いざとなれば、

 隣のシードおじさんに

 手伝ってもらうから。」


「え、おじさん。最近、腰が痛いって

 休んでたんじゃない?」


「あれ、休むための口実だから、

 尻叩けば何とかなるわよ。


 クレア、今しかできないこと

 やっておいで。

 

 お母さんは若い頃、やりたいこと

 たくさん我慢してきたの。

 あなたには好きなことしてほしいから。」


「……お母さん、ありがとう。

 うん、やってみる。

 これ、応募するのに

 メール送らないといけないみたい。

 この洗濯物干し終わったら、

 部屋でやるね。」


 フライアはクレアをハグして

 励ました。


「うん。

 あとは任しとき。

 お母さんに。」


 クレアは羽根をパタパタと喜びを

 あらわした。


 人間でも、動物でもないクレアは

 不思議な力を持つ妖精だった。


 冬には雪を降らしたり、

 夏には雨を降らしたり

 一年の中で晴れにしたい時は

 一振りの魔法の粉を振り撒けば

 晴れにできる。


 天候を変える力があった。


 その魔法も万能ではなくて

 心や体の調子が悪いと悪天候となす。


 心身ともに健康に過ごすには

 人間と同じような生活を送らないと

 いけなかった。


 なんでもかんでも魔法に頼ることは

 許されない。


 本当に必要な時にだけ

 使える。



 ここは、空に広がる雲の上の世界。


 人間と同じように生活する妖精が

 何百人と存在する。



 下界の生活に憧れを持つ妖精が

 数多くいた。


 舞台で活躍する俳優や歌手などは、

 妖精の世界にはない。


 どうしてもやりたい時は

 下界に行かないといけない。


 空の世界を【フロンティア】という。

 空の下の世界を【リアルワールド】という。


 飛行機に乗るようにチケットを購入すれば

 誰でも行ったり来たりできる。



 その移動手段の乗り物は気球となる。

 


 たくさんの気球が飛んでいる時は

 フロンティアでお祭りが開催している時

 だった。



 動物たちは

 妖精たちの生活に

 憧れをいただいており、 

 妖精たちも動物たちが羨ましかった。


 隣の芝生は青く見えるもので

 結局はどこ行っても同じだと気づくものも

 多い。


「よし、これでよし。

 送れた。」


 クレアが応募メール送ると、返信がすぐに来たようで、日時と場所が書かれていた。



「明後日?!急だなぁ。

 お母さん、明後日、

 オーディションだって。」



 近くにいた母のフライア声をかける

 クレア。


「準備するもの用意しようか?」


 やる気満々のフライアはかなり

 積極的だった。


「う、うん。そうだね。」



 胸の高鳴りをおさえられそうにないクレアは、大きめのバックに出かける準備をした。



しばらく、空の天気は晴れそうだ。

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