【ギルティ・ダービー】 #1

その時、TOKYO競馬場の熱気はピークに到達した!地を揺らし轟く歓声!芝を踏み荒らす蹄の音!鳴り響く銃声!競馬場は、少女らの駆る一角の馬…《ユニコーン》の放つ有害なWi-Fiで満ち、しかしそれすらも熱狂が塗り潰している。生を受けてより未だ無敗。『抜かずの女帝』が勝負を挑まれているのだ! 1



『全馬、一丸となって最終コーナーを通過!先頭をゆくはブラッドアロー、ジョッキーは瞬!抜かずの女帝に最初に食らいつくのはどの馬かッ!』実況の言葉にも熱が入る。『バレットダンスが追いすがる!続いてクライムハンター、ロシナンテ、外から猛然と追い上げるのはマリッジブルー!』 2



踏み荒らされ舞い上がる芝の欠片。それを蹴散らし猛進するマリッジブルー!「遅い…!抜かずの女帝破れたりーッ!」馬上の少女が叫び、銃を構えた!だがその瞬間、KABOOOOM!爆発が起こり、マリッジブルーと騎手はその中に消える。コース上に仕掛けられた地雷を踏んだのだ。 3



「愚かなり、マリッジブルー!」騎手の誰かが嘲った。罠を見極め躱す。それの成し得ぬ者に勝利はなし。だが、勝負を仕掛けぬ者にもまた勝利はなし!爆轟に倣うように次々と銃を構える騎手。それらの向く先は先頭、ブラッドアロー!勝ち馬に食らいつかんとする牙じみた銃口が、一斉に火を吹いた! 4



その瞬間、ブラッドアローの姿が消えた。否、サイドステップで弾丸を躱したのだ!「バカな…!」続けざま放たれる弾丸の雨。それら全てを、ブラッドアローの騎手は振り返ることすらもせず躱してゆく!その神業!「「「ワオオーッ!」」」観衆が抜かずの女帝の美技に酔う! 5



しかしサイドステップの度、着実に速度を上げ、詰め寄っている馬がいた!『これは…!?バレットダンス、いつの間にかブラッドアローの側面にいるッ!』「捉えましたわッ!」バレットダンスの騎手、麟がソードオフ・ショットガンを振り上げた。筒の向こう、抜かずの女帝・瞬は麟を見ない。 6



銃が鉛を吐き出した瞬間、抜かずの女帝の姿は消えた。ブラッドアローはその時、バレットダンスの前に躍り出ていた!「「「ワオオーッ!」」」最大の歓声が上がった!マズルフラッシュが視界を僅か遮る瞬間の加速!抜かずの女帝は全方位に目が付いているのか!?加速は止まらず、後続と差が広がる! 7



「ま、また私は…!」バレットダンスの上で麟が目を剥く。離れゆく敵の背を為す術もなく見つめる。一馬身。二馬身。三、四、五馬身!『何たる末脚!24000mを逃げ続け、どこにこんな脚が残っているのかァッ!』矢のように走るブラッドアロー!彼女らは走り…ついにただ一馬、ゴールテープを切った! 8



「「「ワオオーッ!ウィーピピー!」」」盛大な声と拍手が、ブラッドアローと瞬を出迎えた。『一着はブラッドアロー!ただの一度も銃を抜かず、ただの一度も追い抜かずにトモシビ記念を制す!抜かずの女帝!その栄光は輝き続けるッ!』ブラッドアローは、角に絡んだテープを誇らしげに掲げた。 9



…優駿に跨り観衆に手を振る瞬は、勝利に何の感慨も抱かけなかった。芝の匂い。ブラッドアローより伝わるその感触。他の馬を置き去りにするだけのレース。それだけのことに上がる歓声。何もかもが押し並べて紋切り型で、ありきたりで、何もなかった。((虚無«シャバ»い…))漏れる息に、心を隠す。 10



いつからか抱いていた疑問に、走れども答えは出ていない。このレースでも、答えは出なかった。このモノトーンの荒野を。何もない、ただの道を。あとどれだけ走れば、自分は抜け出せるのだろう。 11






探偵粛清アスカ

【ギルティ・ダービー】 #1






そびえ立つ岩壁と陽光遮り毒の雨降らす雲で、この国が『鎖国』され50余年。かつて日本と呼ばれていた国が畏怖を持って魔界立国ニッポンと呼ばれるようになり、それだけの時が経っていた。超常の業が飛び交い誰もが罪と無縁でいられない国では、何もかもが以前と異なる。競馬とて、例外ではない。 12



ニッポンが人口を大きく減じた理由として、人食いWi-Fi怪物マルファクターの存在が大きい。毒の雨の下をも闊歩し獲物を食い荒らす彼らは、しかし一部は懐柔や意思疎通・共存が可能であり、そのひとつが《ユニコーン》と呼ばれるマルファクター。今日のニッポン競馬は、彼らによるものが主流だ。 13



彼らの特定条件下での凶暴性発揮を防ぐべく、遺伝子最強組換人造少女ジョッキーが生み出された。《ユニコーン》の持つ強靭さに起因してコースは長くなり、銃や地雷などの残虐兵器が解禁され、対戦相手の殺害が許可された。ニッポン競馬は、合法的に殺人を楽しめるショーへと変わり果てていた。 14



麟は叩き付けるようにクリーニングロッドを置くと、銃爪を引いた。空の薬室を虚しく打つ音が響く。整備を終えた散弾銃を安置すると、ベッドに身を横たえ、叫んだ。「くッッッそムカつきますわァッ!何なんですの、あの女ッ!」脳裡には、数時間前のレースが焼き付いている。 15



抜かずの女帝、瞬とブラッドアロー。銃口を真横に突き付けられて尚、顔色一つ変えずに走り続ける異常者。……否、それ以前に、彼女は麟を見てすらいなかった。あの目の底に潜む感情。決して測り得ぬそれを、麟は恐れていた。「畜生、畜生、畜生ッ!」頭を抱え、ベッド上でのたうつ。 16



その時、部屋の扉がノックされた。「麟さん、よろしいでしょうか?」「…どうぞ」拒絶の色を込めた返事も空しく、扉が開く。痩躯の男性が入室し、控えめな、しかし無遠慮な足取りで、身を起こした麟に歩み寄る。「マネージャーさん、何か御用でして?」「次のレースについてお話ししたいことが」 17



麟の不快を知ってか知らずか、マネージャーは続けた。「明後日のAAAカップ。やはり出場されるおつもりで?」「当然ですわ。あれには抜かずの女帝も出るのです。今度こそブチ抜いてやりましてよ」「…はあ、左様ですか」「何かございまして?」「いえ、その」言い澱むマネージャー。 18



何を言い澱んでいる?麟は、彼の目線や表情から、それを類推しようとした。だが、それを遮るようにマネージャーは再び口を開いた。「麟さん、次のレース、それじゃなきゃダメなんですか?」「当然ですわ。抜かずの女帝を下さずして真の勝者とは言えませんもの」「……はあ」頭を掻くマネージャー。 19



「何か言いたいことがおありで?」「あんな化物と競り合うレースを続けてたらあなたの馬、バレットダンスの体が持ちません。そろそろやめるべきですよ」「お断りですわッ!」麟は唾を撒き散らし、マネージャーに詰め寄った。「私はもう短いんですのよ!今更どうこう言われる筋合いありませんわ!」 20



「なればこそ、スポンサーとかのことも考えて頂きたいんですがねえ」麟の肩を掴み、押し留めるマネージャー。麟は尚も彼に近づこうとするが、その距離を縮めることは出来なかった。遺伝子最強組換人造少女ジョッキーと言えど、衰えるのだ。彼女の残り時間が少ないことの、何よりの証明だった。 21



《ユニコーン》は処女以外の人間を強く憎むマルファクターである。それを御す為、遺伝子最強組換人造少女ジョッキーは生殖機能をオミットされ、また生まれついての身体強化施術が成されている。それらの影響により、彼女らの寿命は極端に短く、麟の寿命もまた、風前の灯火であった。 22



無茶を押し走り続けて来た彼女の身体メンテナンス費用、それらはスポンサーより捻出されたものだ。彼らのことを考えろとはつまり、オミットされた生殖機能を搭載して…。「お断りですわ」麟はマネージャーを睨んだ。「死ぬならターフの上で。この身体に生まれてより決めていたことです」「ンー」 23



マネージャーは麟の肩から手を放した。「他にもやりようはあると思うんですけどねえ。対戦者を殺して殺戮ボーナスを狙ったりとか。というか寧ろ、私はそうして頂ければと思ってるんですが」「お断りですわ。結果的に殺すことはあれど、最初から殺害狙いなどジョッキーの風上にもおけませんもの」 24



「アレもダメ、コレもダメ。一体あなたに何ができるんです?」「勝ちますわ」「毎回言ってますよねソレ」「…」「ま、いいですケド」踵を返すマネージャー。扉に手を掛けながら、頭だけを振り向かせる。「スポンサーを抑え込めるのも、今回が最後だと思ってください。コレでダメなら方針転換です」 25



「毎回言ってますわね、ソレ」「そりゃそうでしょう。あなたの走りに惚れ込んでマネージャーになったんですからね」「感謝いたしますわ」麟が頭を上げた時、既に扉は閉じていた。一人残された麟はベッドに座り込むと、頭を抱えた。実際、彼の言う通りだ。自分は抜かずの女帝に一度も勝てていない。 26



そもそも、ニッポンの競馬は今や単なる殺戮ショービズと変わり果てている。勝利に意味はなく、ただ合法的に血を見せること。自分たちに求められているのはそれだけだ。…だとしても。((勝ちたい))その想いは消えなかった。共に走るライバルたち。彼女らはどうなのだろう?確かめることはできない。 27



自分のピークは既に過ぎ去ってしまった。それでも殺戮ではなく、走りにこそ何かを見出してくれたマネージャーの為に。そして何より、自分自身の魂を満たさんが為に。恐らく、次が本当に最後のチャンス。必ず。必ず、抜かずの女帝に勝って見せる。……例え、どんなことをしてでも。 28



────────────────



ブーツクツクーツツクテンツクツクツクテンブーツクツクテンツクテン!『この一撃に……俺は全てを賭けるッ!』ZAAAAAAAAP!!KRA-TOOOOM!!紫色の極太レーザーが周辺一帯を薙ぎ、あらゆる建造物を爆発四散させる!だが、その猛攻を潜り抜けて漆黒の機体がビームのあるじに接敵した! 29



「「「ワオオーッ!」」」上がる歓声を背に受け、和田 輝之は複雑なコマンドを連続で入力。それに合わせて画面の中で漆黒の機体が乱舞し、対戦相手をビームサーベルで切り刻む!「すげえ動きだ!」「ウソ、あんなコンボ成立するの!?」「アーッ!ウアーッ!」絶叫と共にレバガチャする対戦相手! 30



しかしどれだけ動いても硬直から抜け出すことは出来ず、彼の機体は遂に爆発四散した!ゲームセット!「「「ウィーピピー!」」」敗者の健闘と勝者の栄光を賛える声が、ゲームセンターに響く。和田 輝之は、その中で静かに立ち上がった。「何も言わずに去るか…」「クールだぜ!」「奥ゆかしいな」 31



それらの称賛は和田 輝之にとって嬉しいものであったが、彼は努めて平静を装った。これからの自分に、そういったものはあって当たり前のものになるのだから。ゲームセンターの極彩色は、彼の道を照らす栄光、そのものであった。 32



輝之は、田所電機開発室に勤める父親を想起していた。毎晩のように泣きながら便器に縋り付き、嘔吐する父。尻のポケットからは、違法薬物と思しき袋が垣間見えていた。それを咎める母のヒステリックな叫び声。全てに蓋をしながら、淡々と家庭教師の授業を受ける。この家に、幸せはない。 33



学校が終われば塾。塾が終われば家庭教師。そして再び学校へ。共通テストでいい点を取っていい大学へ行き、いい会社へ入れば全てが自由になる。だから今は我慢なさい。母はいつもそう言っていた。欺瞞だ。間違ってる。しかし逃げる術もなく、合間を縫ってゲームセンターに通うしかなかった。だが。 34



数週間前、トモシビグループ頂点10企業『火守』がひとつ、ラムダエンターテイメントより受け取ったメールを輝之は思い出す。その内容は、プロゲーマーとしてのスカウト。自身を包む灰色から逃げる為に続けていたゲームが、このような道を拓くとは。初めて自分で拓けた道が、誇らしかった。 35



ゲームセンターを出ると、遊技場とはまた違う色を含んだ極彩のぎらつきが、輝之を出迎えた。ニッポン都市上層は、あえて地表と近しい作りがされている。LEDの夕暮れの下に輝くネオンサインが、疲れ切った人々の顔をサイケデリックに染めている。その下に潜む灰色から、輝之は逃れるように歩いた。 36



その背が、突如として強く叩かれた。「ひッ!?」「よお、テル」声と同時、彼の視線の横に、ぬうっと厳つい顔が現れる。短く刈り込んだ髪。太く逞しい腕はパンク・ロックバンド『耳狩芳一』のTシャツを引き千切らんばかりであった。獰猛な笑顔を見せる彼を見、輝之は呆れたように溜息をついた。 37



「何だ、正雄か…驚かさないでよ、顔コワいよ」「いい加減慣れろって。何回目だと思ってンだよ」正雄と呼ばれた男は、そのまま輝之の肩に腕を回し、連立って歩き出した。「さっきの試合見てたぜ。テル、オマエまた腕上げたんじゃねえか?」「卒業したらプロだからね。そりゃ、成長していかないと」 38



「流石、エリート様は違うねえ」「そうそう。僕、英才教育の塊だから、将来の準備は怠らないわけ」「…ホント変わったよな、オマエ」正雄は目を丸くした。「そンな冗談飛ばすようになったンだもンなあ」「君のお陰だよ」「なら良かったわ」二人は顔を見合わせ、笑った。 39



「テル、今日もこれから塾か?」「うん。塾サボったら、母さん包丁持ち出して、僕の目の前で腕ザクザクやり始めるからさ。まだ隠しておかないと」「ホンっト大変だなオマエ…」「けどそれももうすぐ終わり。明後日の公式戦で優勝すれば、一流企業所属のプロゲーマー!母さんも文句ないでしょ」 40



「だといいな」正雄は笑い、輝之から離れた。「じゃ、俺そろそろゲーセン戻るわ。また明日、ガッコでな」「うん、気を付けてね」「そりゃオマエだろ」そうして二人は、別々に歩き始める。また明日、学校で。少し前の自分では考えられなかった挨拶だ。その響きを噛みしめつつ、輝之は足を交差する。 41



正雄は不良であり、本来ならば関わることすらない立場である。だが、ゲームセンターで彼と出会い、親交が始まった。プロゲーマーとしてのスカウトに一番喜んでくれたのも、彼だ。不思議なことに彼と友人になってから、何故か成績も上がっている。友情とは、いいものだ。知らず、口元が緩んでいた。 42



その時だ。「ぎゃッ!?」輝之は、通行人とぶつかって尻餅を突いた。「す、すみません…!」慌てて立ち上がって120度のお辞儀を繰り出す。しかしぶつかった人物もまた尻餅を突き、そして未だ立ち上がらず、輝之を見ていた。「あ、あの…」「…」「大丈夫ですか…?」「はあ」ぼんやりとした返事だ。 43



輝之は不審がり、声のあるじの顔を見た。そして、目を見開いた。墨を垂らしたような長い黒髪の下に、氷の彫像めいた美を持つ少女。しかしそれは、真っ赤な血に染まっていたのだ。輝之は困惑する。何らかの事件性がある。早急に立ち去るべきだ。見て見ぬふりを決める、周りのサラリーマンのように。 44



だがひょっとしたら…彼女は困っているのではないか?警察に駆け込むことすらできない事情があるのではないか?一人で心細く、震えているのかもしれない。その思考は行き過ぎた邪な妄想に等しいことは承知していた。しかし、もしも彼女が本当に一人ならば…。過去の己の姿を、輝之は思い出した。 45



「あの」輝之は意を決し、少女に手を差し伸べた。「何か、お困りだったりしますか?」「はあ」少女は輝之の手に掴まり、立ち上がった。そして眉をハの字にし、ゆっくりと口を開く。「その、たぶん」「ハイ」「困ってる…」「…!」「のかな?」「えっ」「よくわからないです」「えっ」「えっ?」 46



輝之は困惑した。きょとんとした顔で己を見る少女は何者なのだろう。記憶に異常があるのだろうか?「ええと、お名前はわかりますか?」「いえ、わからないです」やはり、か。目を細める輝之。ならばまずは病院か?少女が再び口を開く。「だって初対面ですよね?わたしたち」「僕の名前じゃなくて」 47



「あっ、わたしの名前ですか?」「そうです、そうです。わかりますか?」「ええっと…」少女は顎に手を当て、考え始めた。((やっぱり異常あり、か))輝之はがっくりと肩を落とした。自分の名前を答えるに時間が掛かるなど…。その時、少女はポーチを開け、一枚の紙片を取り出した。「瞬、ですね」 48



「いや、身分証あるんですか!」「そりゃ、ありますよ。社会人の必需品ですから」「その割には思い出すのに時間かかってませんでしたか?」「まあ…使いませんから…」「必需品なんじゃないんですか?」「マネージャーさんからの受け売りでして」「マネージャー?」輝之は訝るように繰り返した。 49



その瞬間、輝之のうなじがチリチリと音を立てて焦げた。まるで、ヒステリックに声を荒げている母が近づいているような、そんなプレッシャーを感じ取る。母は上層にはこない。ならば…!((この子か!))輝之は瞬の腕を掴むと、走り出した。「ひゃっ!?」「走って!」通行人の狭間を縫い、裏路地へ! 50



階層に関わらず裏路地は危険地帯である。だが、身を隠すにはそこ以外にない!((頼む……何もいないで……!))狭く暗い裏路地を、瞬を連れて走る。幸い、どのような危険人物がいる気配もない。だが、すぐ近くに何かが迫りつつあるようなプレッシャーがある!「こっち!」輝之はゴミ箱を開いた。 51



瞬をその中に押し込むと、自分も飛び込んで蓋を閉めた。「…?あの…」「静かに…!」暫く息を潜めていると、慌ただしい気配が迫ってきた。((やっぱり…この子、追われてるんだ!))輝之は確信する。自分は何と関わりを持ってしまったのだろう?塾の開始時間には間に合うだろうか。 52



やがて、気配は去って行った。さらに数分を過ごした後、輝之は瞬と共にゴミ箱を出た。「ふう…」胸いっぱいに空気を吸い込む。瞬は、やはりきょとんとしたように輝之を見ていた。輝之は、彼女を強く見返す。「追われてたんですね」「ええ…まあ」「なのに何でそんな他人事みたいに…」「はあ」 53



「何者なんですか、あなた」「えっと、瞬です」「名前ではなく…」輝之は手を差し出した。「身分証。よろしければ、見せて頂けませんか」「ええ、はい」瞬は、躊躇うことなくポーチから身分証を取り出し、渡した。「これは…!」瞬の身分証を見た輝之は、苦々し気に眉を顰めた。 54



彼女の職業は、ジョッキー。輝之は、面接対策の一環として見るニュースを思い出した。ニッポンの競馬は、対戦相手の殺害も許可されている。ならば誰もが考えることがあり、その結果が度々ニュースとして報じられるのだ。即ち…!((僕は、ジョッキー暗殺事件に巻き込まれているんだ…!)) 55






(つづく)

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