エピソード啓二&美香:帰り道
「まだ空が明るいね」
宍戸のバイト先である喫茶店を出て、美香を家まで送り届ける為、二人で歩く帰り道。
時刻は18時を過ぎているのだが、うっすらと夕焼け雲が見えるぐらいで。
「凄く落ち着くというか、雰囲気の良い喫茶店だったな」
「そうだね。今まで入った中で、一番好き」
「そうなの?」
「うん。お洒落なカフェは、なんだか落ち着かなくって」
「そっか。無理させてごめん」
「あっ、そうじゃないの。私は啓二となら……どこでも楽しいよ?」
そう美香は、繋いだ手を一度離してから、俺の左腕を両手で抱きしめてくれた。
人通りの少ないこの道だからなのか? 俺の肩にちょんと頭を乗せるようにして、甘えてくれる。
俺は美香の笑顔が大好きなんだけど、それから
今みたいに、甘えてくれる美香も大好きなんだ。
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「相沢さんて、美人だけど冷たそうじゃない? 正直、話しかけにくいよね」
「相沢さん、ツンとしててなんか怖いじゃん」
美香の話題になると、必ずと言っていい程、耳にするその言葉。
でもみんな、本当の美香を知らないんだ。
知ってるか? 表情が豊かな訳じゃないけど、笑うと凄く可愛いんだぜ。
冷たそう? こんな優しい女性を他に知らないけど。
美香が見た目通りなのは、しっかりしてるってことだけなんだよ。
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「ねぇ」
「ねぇ、啓二ってば」
「ご、ごめん」
「また宍戸君のこと考えてたの?」
「違うよ」
「嘘つき」
「本当だって」
「じゃあ、何を考えてたの?」
「美香のこと」
「えっ?」
そう驚いた美香は、俺にぴったりとくっつき『私はずっと、横にいるんだけど?』と俺の大好きな笑顔を向けてくれる。
「その笑顔が、大好きなんだ」
「もぉ、恥ずかしいよ」
「美香はホント、可愛いな」
「ふふふ、もぉ。でも、嬉しいぃ」
その言葉が俺も嬉しくて、思わず抱きしめた。
「ちょっ、ちょっと啓二? 人が来ちゃうよ」
「ずっと、ずっと俺の横にいてくれないか?」
「プロポーズ……みたいなんですけど?」
「それでも、俺はいいけど?」
二人にとっては進まない、そんな帰り道。
※ エピソード08のアフターストーリーです。
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