超短編集 神様宛の走り書き

五月ちひろ

第1話 これから結婚して、それから離婚する君

 彼を愛してへんけど、結婚する、と彼女は言った。僕は彼女の発言をどう解釈して良いのかわからず、困惑した。結婚おめでとう、と涙をこらえて彼女に伝えた僕は間抜けなのだろうか?

 なぜ、愛していない男と結婚するのか、僕はおそるおそる彼女に尋ねた。すると、彼女は、彼が私を必要としているからに決まってるやん、とあっけらかんと答えた。僕だって彼女を求めている! と、言えない弱虫の僕は、納得いかない気持ちで、へぇ、と相づちをうった。

 私はきっと離婚するねん、と彼女は続けた。僕は驚いて飲んでいたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。彼女はそんな僕を見て声をたてて笑った。そして、また独り身に戻ったらデートしよな! と、一筋の涙を流しながら僕を慰めてくれた。僕はただただ情けなく、彼女にむかってうなづくしかできなかった。

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