巨人
時々、巨人を見かける事がある。
巨人はどの時間帯にも、至る所にいるが、基本的には人通りの少ない道や山や森の中で見かける。「巨人」と表現しているが、それは姿形が人間に近いモノが多い、というだけであり、概ね人間には見えない。一番多い姿は、子どもが粘土で作った鬼のような、土色をした人型で、角や牙が生えているものである。他には大きな顔から足が一本生えているような姿のものや、ローブを着た魔法使いのような姿のものも見た事がある。それぞれ小さなものは2、3メートル程度で、大きなものは10メートル程度のものを見た事がある。
巨人は、例えば車の通りが少なくなった深夜の国道の歩道橋に顎をのせて立っていたり、昼間の住宅街の狭い道にボーっと立っていたり、大きな通りの看板に寄りかかっていたり、木々の合間をゆっくり移動していたり、河原に座っていたりする。
あれが通常は見えないモノである事は理解している。そもそも存在しているのか、物理的にちゃんといるものなのかはっきりとはわからないが、たまに電線に止まっている鳥を手を振って追い払っていたり、移動する際は家や車を避けているので、ある程度なにかを触ったりできるのだろうと思っている。
どちらかと言うと山の近くや、森の中で見かける事が多いので、元々はそういった場所にいる存在なのかもしれない。だからといって街中にいないわけでもなく、人通りの多い場所で建物の合間に挟まり、じっと道行く人を見つめている姿を見かけた事もある。
巨人が建物等を破壊している様を見た事は無いし、積極的に人や動物に危害を加えている場面はあまり見ない。ただ一度だけ、公園のジャングルジムに寄りかかっていた、毛だらけの、洗っていないセントバーナードのような見た目の巨人が、ジャングルジムで遊んでいた子どもを手で払っていた場面を見た事がある。子どもはそのままジャングルジムから落ちて怪我をしてしまった。
だから私は巨人には近づかないようにしているし、見かけても無視するようにしている。一般的にはあの巨人は見えないものなのだろう、普通の人は巨人が見えなくて不便だろうなといつも思う。
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