娘の仇

ツヨシ

第1話

駒井が仕事帰りのことだ。

ふと反対車線の歩道に、自分の娘が歩いているのが目に入った。

――こんな時間に、なんでこんなところを歩いているんだ。

そう思ってよく見ると、若い男と一緒に歩いているのが見えた。

――えっ?

そのまま二人して路地に入る。

駒井は慌てて二人を追いかけようとしたが、信号待ちで駒井の車の前後に車がいる状況だ。

動けない。

そのうちに信号が変わり、車が動き出す。

駒井は先で強引にUターンすると、そのまま二人が消えた路地に入った。

しかし二人の姿はどこにもない。

携帯にかけると、誰も出なかった。

――どうするか?

どうしようもない。

しばらく娘を探した後、駒井は家に帰り、娘を待つことにした。

妻は、娘はコンビニに買い物に行ったと言う。

そのまま待つ。

しかし娘はいつまでたっても返ってこなかった。

深夜、駒井は警察に連絡を入れた。


駒井の娘が見つかったのは三日後のことだった。

それも死体で。

娘が入った路地の奥で、普段人が立ち入らないようなところだ。

かくれんぼをしていた子供が見つけたと言う。

まだ中学生の一人娘が殺された。

駒井と妻の怒りと悲しみは、いかほどのものか。

駒井はその後の人生の全てを、娘を殺した男を見つけることに使うと決めた。

もちろん警察にも娘と一緒にいた男のことは言った。

似顔絵も書かれたが、犯人と断定する決め手がなく、指名手配犯とかにはならなかった。

そんな中、駒井は妻ともども男の似顔絵をあちらこちらに配り、電柱や頼み込んだ店先などにも張ったりもしたが、なんの情報も得られなかった。


娘が死んで数か月たったある日、会社帰りの駒井は驚いた。

なんと娘と一緒にいた男が前から歩いてくるではないか。

これまで何の情報も得られなかった男と、突然遭遇するなんて。

駒井は車をUターンさせ、静かに男の後を追った。

男は人通りの少ない路地に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る