創作ショートBLまとめ

@myaaaaaaaa

創作BL_嘘の弟の話_上

攻めが目を覚ましたとき、そこは真っ白な病室だった。

あたりを見渡すとそばにはふわふわの黒髪の男が一人座っている。


攻めが目を覚ましたことに気づくと受けは大慌てで

 「大丈夫!?痛みは!?」

うん、とただ頷いてやると途端にホッとした表情で、医者を呼んでくる!と言い残し走り去った。


しばらくして医者を連れて戻ってきた受け。

医者と攻めがしばらく問答をすると医者は「問題なし」と、病室を後にした。


どうやら俺は階段を踏み外して転げ落ちてしまったらしい、と攻めは現状を理解した。確かに足が痛む。痛みの方向へ目をやるとギプスで足が固定されていた。


そばには同級生の受けが居る。家族は…来ていないらしい。

 「お母さんには連絡いれといたから、しばらくしたらお見舞い、来ると思うよ」

ありがとう、とだけ返すと受けは

 「俺のこと…わかる?」

当たり前だろう。マンガやアニメじゃないんだから、と思いつつ攻めは

 『ええっと…確か同じクラスの…ごめん、名前、なんだっけ…』

とちょっとおどけてふざけてみせた。


すると受けは酷く驚いた様子で

 「忘れたの!?記憶喪失!!???」

と慌てた。俺だよ、○○だよ!!!お医者さん呼び戻そうか!!??ほんとうに忘れちゃった…?と不安そうにする。


攻めはそんな受けがちょっぴり面白く、そして愛おしかった。

あまり意地悪するのもやめよう、と攻めが思ったとき

 「俺だよ…弟の○○だよ……わからない…?」

と受けが言う。


弟…?いや、○○とは同級生で、恋人関係のはずだ。


冗談にしてはトーンが重たい。


続けるからにはオチがあるんだろうな?と思い

 『……?すまない……』

と返すと、受けと攻めは異母兄弟であること。二人は同じ高校に通う二年生であること。攻めは母親と二人きりで暮らしていること。受けは今の父親と血が繋がっておらず、二人の実の父親は消息不明であることを教えてくれた。


二人が異母兄弟なのはひょんなことからわかったのだ、と。

ひょんなこと、の詳細までは「長くなるから」と教えてくれなかった。


そして受けは最後に、自分たちが兄弟であることは二人だけの秘密で、絶対に攻めの母親には知られてはいけないと付け足した。受け曰く攻めの母親は一途な性格なので、消息を心配している旦那が実は遊び人だった、と知ればきっとショックを受けるからと。


攻めはあまりの情報量にめまいがした。

俺が記憶喪失…?

○○は弟…?

とすると、恋人だと思っていたのは勘違い…?

頭の整理が追いつかない。


確かに、受けとは家族のことで共通点が多く、それがきっかけで仲良くなった。

しかしそんな受けが実は弟だった…?


だめだ、俺は本当に記憶喪失になったようだ、と攻めは確信した。

と同時に、先程まで受けに感じていた愛おしさは相手が弟であるからだと理解した。

なんだって恋人だなんて勘違いをしていたのだろうか。


 『すまない、頭が混乱していて…しばらく寝かせてくれ…』

兄がシーツを頭から被ると弟は「うん、」とだけ言い残して病室を出ていった。

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