第20話

「いらっしゃいませ……」


その露店には黒づくめのロングコートとフードという格好をした、いかにも怪しげな女性がいた……。何故に、こんな怪しげな露店に足を運んでしまったのかわからないが……。


「坊やと嬢ちゃんはカップルかいな? 私がお主達にぴったりの物を、選んだるで? 坊や達が最初の客やし、クリスマスイブやでな……、今日はサービスや!」


女性は、僕達が口を挟む間もなく、勝手に話を進めた。


「このハートのペアのペンダントロケットがええやろな……。これは、ペアになっとってな……、お互い、好き合っとる二人がたとえ、離ればなれになったとしても、好きな気持ちを持ち続けている限り、お互いに引き寄せ合い、巡り逢うっちゅう代物らしいわ……」


「らしい……って、おばさん……」


女性に突っ込もうとして、睨みを利かせられた……。


「いえ……、お姉さん? 知らへんのですか!?」


訂正して、突っ込んだ。


「信じるか信じんか、は坊や達次第や」


無責任で投げやりな発言する女性……。


「信じられはせえへんけど、信じる者は救われるという言葉もあるで……、凌君?」


「ほやな……。信じてみるか……(めっちゃ怪しいねんけど……)」


僕達は、女性が薦めたペンダントロケットとネックレスを買う事にした。


「まいどー、おおきに!」




僕達は、早速、ネックレスを着け、露店を後にした……。




「……?」


「……?」


露店を出て、暫く歩き、振り返ると、露店は跡形もなく、最初から無かった様になっていた……。それでも、ネックレスはあったのだった……。




「アハハハハ……! あれは元々妾が男の浮気防止と妾に近付く下衆な男共を近付けさせない為に作った故に、呪いが掛かっていてね……、男や女が他の者に色目を使う様な事だけでも股間が痛み、他の者が逆の事を仕掛けて来れば、その程度により呪いが発動し、なくせば呪いが解けるという仕組みの物じゃ……! 坊やは大丈夫そうじゃが、嬢ちゃんの方は男共が近付く事が多かろう……。合掌じゃな……」


女は、合掌しながらも、口もとを震わせ、笑いをこらえていた……。

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