第13話 復活ラヂオアプリ(3)

“次のお便りは、こちらです。


 OTO姫おとひめさん、こんにちは。


 はい、こんにちは。


 このアプリの事は、友だちから聞きました。なんでも、このラジオでメッセージを読まれたら、どんな事でも復活するらしいですね。僕には、どうしても復活させたい物があります。それは、スマートフォンのデータです。先日、友人と海へ行った際に、誤ってスマートフォンを水没させてしまいました。幸い友人たちの連絡先は、登録し直す事が出来ましたが、それ以外の、写真やゲームのデータはロストしてしまいました。頑張ってランクを上げたものや、思い出の写真なので、出来る事なら、それらのデータを復活させたいです。


 という事です。コレは、もうデータをクラウド管理していなかった本人が悪いでしょう。自業自得です。諦めましょう。と、言いたいところですが、一部の携帯は、しっかり乾かすと復活したりする様ですよ。……えっ? その情報は古い? 昔のガラケーにしか通用しない? だそうです。やはり、諦めましょう。それか、携帯ショップに泣きついてみましょう。もしかしたら……イヤ、無理でしょうね。きっと。


 では、次のお便りです……”


 とてもくだらない内容だった。しかし、そのくだらなさが、自分自身には関係なさすぎて、オレの心の警戒心を取っ払う。


 スマートフォンから聞こえてくる機械じみた異質な声が、また良かった。感情のこもらないその声で人の心の内を読み上げ、それに対して、辛口なコメントをしているという、なんだか、アンバランスな感じが、とても非現実染みていて可笑しかった。


 緩い風と光の中、不思議なラジオを垂れ流す。先ほどまでの不安定さはどこへ行ったのか、クリアさを保ったまま、異質な声が朗々と流れる。


 それを咎める人はいなかったが、時折聞こえる車の音や自転車の気配が、そのラジオの声を掻き消すのが嫌で、オレは、ポケットからイヤホンを取り出すと、両耳に差し込んだ。


 途端に、直接脳に響く様に、異質な声が耳いっぱいに広がる。


“それはもう、あなたが悪いんじゃないでしょうか。きちんと掴んでいなかったのが、悪いと思います。相手は紙ですよ。簡単に飛ばされるに決まっています。あなたの元を離れたと言う事は、縁がなかったのです。それでもと思うのならば、もう一度トライすれば良いでしょう。宝くじはいつだって買えるのですから。


 では、次のお便りです……”


 それからしばらく聞いていたが、全てがくだらない内容だった。

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