第4話 櫻木紬のルーティーン(4)
睡魔に負けてから、数時間後。
玉のような汗をかいて目が覚めた紬は、まだ夢現にいる友人に対して、お暇の挨拶もそこそこに、自宅へと急ぎ帰った。
リビングでは、朝食中の両親が目を丸くして出迎えた。
外は、眩しい朝日に満ちていたが、寝不足の紬は、一刻も早く心穏やかに眠りたかった。
紬は、青汁を1杯作って飲み干すと、グラスをすすぎ、両親に向かって言い慣れた就寝の挨拶をする。
「
紬の切羽詰まった挨拶に、両親も思わず就寝の挨拶を返す。
「
紬は、両親の言葉を聞くや、一目散に自室へと戻り、窓の外の眩しい空を見上げる。空には星など一つとして見えなかったが、紬はそれでも目を瞑り、心の中でもう一度あの就寝の挨拶を繰り返す。
そして急いで自身のベッドへと潜り込む。呪文のようにあの言葉を心の中で繰り返していると、次第に心が凪いでいき、紬は、いつしかふわふわとした心地よい眠りへと誘われていった。
再び紬が目を覚ました時、外は間もなく夜の帳が降りようとしていた。
それほどまでに、深く心地良い眠りにつけたことに、紬は1人安堵した。
そして、今夜も、いつも通りに過ごす事を、心の中でそっと誓う。
お泊り会の時に友人が口にした『おやすみ』という言葉が、実は、紬が毎夜口にする就寝の挨拶を、ものすごく簡略化した言葉であると気がつくのは、まだもう少し先の話。
今はまだ、この長々とした就寝の挨拶と闇の中に小さな光を探すことが、女子大生櫻木紬にとって、心安らぐ大切なルーティーン。
彼女の大切な就寝時のルーティーンを、侵すことなく受け入れてくれる運命の相手ともう間もなく出会うことになることなど、彼女も二親も知る由もない。
今のところそれを知るのは、優しい陽光と満ちたる月光、御祖のみ。彼らは今日も櫻木紬を安らかな眠りへと誘います。
完
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『櫻木紬のルーティーン』、完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
次ページからは、『僕のごちそう』をお届けします。
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