第3話 櫻木紬のルーティーン(3)

 初恋もまだの紬には刺激の強過ぎる、友人の熱演を交えた恋バナが堂々巡りを始めた頃、眠さに耐えかねた紬は、ようやく友人の話の隙をついて声をかけた。


「ねぇ、そろそろ寝ない?」

「ん〜? 今、何時?」


 時計は、2時半を指していた。紬は、眠さに堪えて、時刻を告げる。


「もう2時半だよ……」

「あら〜。いつの間に。じゃ、そろそろ寝よっか」


 友人のおしゃべりが終わり、気づかれないように、ホッと小さく息を吐いて、紬は、ベッドから腰を上げる。


「それじゃ、

おだやかなる1日が過ごせましたのは、

やさしい陽光と……」


 紬が、就寝の挨拶を始めると、ベッドへと体を横たえていた友人が飛び起きた。


「ちょ、ちょ、ちょっとー。これから寝るって時に、何言い出してるの?」

「えっ? 何って? 就寝の挨拶を……」

「就寝の挨拶? なにそれ? 何かの冗談? だったら、明日聞くよぉ……。今日はもう寝よ。喋りすぎて私もうクタクタだよ。じゃ、


 そう言って、友人は体を再びベッドへと沈めると、程なくして、寝息を立て始めた。


 1人取り残された紬は、友人の口から流れるように出た、これまで耳にした事のない言葉を持て余す。


「おや……すみ……?」


 友人のペースに呑まれて、自身のルーティーンが乱れた紬は、就寝の挨拶も出来ず、星空を見上げる事もなく、布団に横になり、ただただ友人の発した言葉に囚われていた。


 そして、そんな紬も程なくして、睡魔に眠りの底深く絡めとられてしまったのだが、そんな紬が行き着いた先は、心落ち着かない悪夢だった。

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