第10話 帰宅
「あの主人の事、何かご存知なのですか?」
「やっぱり連絡してないですか……実はですね。本当は私から言うべきでないでしょうが。驚かないで欲しいのですが、彼は昨日突然リストラ勧告を受けまして、かなりショックだったのでしょうか昨日は自分が、どうして良いか分からず、家族にどう伝えれば良いかと悩み、つい酒に溺れたようで野宿したらしいですよ。でも安心して下さい。会社は変わりますが課長待遇で迎えてくれる所がありますから、大丈夫です。だから今夜は明るく振舞ってやって下さい」
「まぁ、そんな事があったのですか。本当に私どもは何も知らず、それにしても佐竹さんにはいつもお世話になって……本当に有難い事です」
そんな電話のやり取りがあった事を知らない真田は、一安心はしたものの家族に心配させたくなかった。再就職は出来る見通しはついたが、やはり心配するだろう。家に帰るまでどう話そうかと、悩みながら家路に着いた。
「ただいま……」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
二日ぶりに連絡もなしに帰って来たのに、妻はいつもと変わりなく応対した。何故だろう? 子供達も珍しく玄関に迎えに出た。家に入ると、いつもより豪勢な料理を用意してあった。
今夜は家族が全員揃っている。息子の克之は大学生といえ二十歳、立派な大人だ。色々と付き合いもあるのか夕食を共にする事は少なかった。それが今夜は居る。真田は余計に違和感を覚えた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます