第2話 3万4千円取られた
家族になんと言えば良いのか、会わす顔もなく絶望の中にいたのだ。
そうなって来ると、やる事は決まっている。屋台で焼き鳥を口に銜えて、安い焼酎をプラスチックにヒビの入ったコップで、水のようにガブカブと飲む事が少しでも現実から逃避出来る。絡まれたのはその後の事だった。
路地裏にある店のゴミ箱や空のビールケースに足を引っ掛けて何度も転びながら、泥酔状態で歩いている所を襲われたのだ。
まだツキがあると云えば、屋台で飲んだ代金を払った後だ。飲めただけマシと言うもの。もし金も無いのに飲んでいたら、無銭飲食で警察に突き出される処だった。
金は財布から抜き取られ一万円札三枚と千円札四枚だ。
だが真田は取られた金額はそれほど惜しくない。
リストラされた心の傷がそうさせたのか。少し自棄になっているからだろうか。幸い財布に入れてあった定期券と運転免許証は無事のようだ。
奴等だって足が付く物は持って行かない、中身の札だけで充分だったろう。
殴られはしたが顔が少し腫れる程度、リストラのショックに比べたら大した事はない。
つづく
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