あるバイク便ライダーのお話
@bemmow3
第1話 朝
この仕事、朝はそんなに早くない
定時の7:50
いつもの場所で暖機
マシンはHONDA VT250 SPADA
レッド一色の外装にゴールドのホイール
キャステックの文字が銀色に鈍く光る
スタイリッシュなSPADAのテールには大きすぎる黄色い箱
緑地に白抜きの数字のナンバープレート
「よし、今日も頼むで」
足つきの良い車体に跨って出発する
ピーガッ
「おはようございます 45今市」
ガッ
「45がイマイチなのはりょーかい こちら向いてください」
ピーガッ
「りょーかいです」
今はどうか知らないが、私の頃は腰に大きな無線機をつけて配車とやり取りをしていた
45は私の無線番号
無線は所属するライダー全員のやり取りが聞ける
走りながらの朝の恒例行事が始まる
ピーガッ
「23長柄北詰」
「3ビル向いてください」
ガッ
ピーガッ
「06四天王寺」
「りょーかい谷四で連絡ください」
ガッ
ピーガッ
「おはようございます11四天王寺です」
「りょーかいこちら向いてください」
ガッ
無線を注意深く聞けば分かるがそれぞれ指示される待機場所は違う
これは仕事に対する優先権のようなもの
事務所に来いとは
(朝の仕事はお前にはないから事務所待機)の意味である
バイク便はほとんどが個人事業主
それは周りすべてが商売敵を意味する
一見全員が同じ扱いを受けられそうなものだが、そこには目に見えない序列がはっきりとある
まずは、
キャリア10年以上のベテランと呼ばれるライダー
次に、
配車から見て使える奴
これは配車のお願い(無茶振り)を嫌がらずこなす便利屋的なライダー
最後に、
いわゆる捨て駒的なライダー
本人も本気で稼ぎに来ているわけではない
今で言うウーバーなライダー
危険な仕事はしないし、配車もそんな仕事を振らない
法規走行遵守で、どこかツーリングライダーのような出で立ち
この場合、
23.06はベテランライダー
45(私)は便利屋
11はツーリングライダー
こういう感じである
そして今日もいつもの一日が始まる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます