#20
恙無く中学の卒業式を終えて、クラスの打ち上げに参加した。高校が別になってしまう友達との別れを惜しみながら、しんみりとした雰囲気に……。
「ただメシうまっ!ガツガツ!ガツガツ!」
「おい!朝日屋!人の分まで食うなよ!」
しんみりとした雰囲気に……。
「ぐいずぎた……ぎもぢわるっ……」
「おいおいおいおい!朝日屋がなんかヤバイぞ!逃げろ!」
しんみりとした……。
「おぇえええぇぇ……!」
「朝日屋が吐いた!?久保ぉ!久保おおお!どうすんだこれ!なんとかしろぉ!」
俺に言わないで貰っていいですか?
いつも通り、カズが馬鹿やって、ヤラかして、特にしんみりとした雰囲気にはならなかった。ドタバタと賑やかな打ち上げ。俺は文句を言いつつ、カズを殴り、カズのゲロを片付けた。
「それじゃ久保!またどっかでな!同窓会する時はオマエらセットで呼ぶわ!」
「カズ抜きで俺1人だけ呼んでもらってもいい?」
「んな事言って、オマエは朝日屋いなかったら寂しいんじゃねぇの?」
「そんなことねーよ」
「そうかぁ?」
同窓会の場でカズが居なくとも、おそらく寂しくは無いだろう。だってコイツとはこれからも一緒に居るのだろうから。カズを小脇に抱えて、去りゆくクラスメイトに手を振った。
卒業式に別れが寂しくて泣いてしまうなんてよくある話だ。クラスメイトでも泣いてる奴は何人も居たが、特に俺は泣きはしなかった。
原因はやはり小脇に抱えてるカズだろう。中学を卒業してもカズとは高校で一緒だ。どうせ高校でもいつも通りだろう。騒がしくなるであろうことは予想に難しくない。
もし、カズと別れて離れ離れになるとしたら、その時は俺も寂しく泣いてしまったりするのだろうか。
まぁ、カズと離れ離れになることがまったく想像出来ないが。
俺の日常には常にカズが居る。家でも、学校でも、それ以外でも、ほとんど一緒にすごしてきた。
このアホガキの面倒を見るのは非常に面倒臭いし、イライラさせられる。100害あって、さらに害をもたらすド畜生ではあるが、そんなカズと離れ離れになりたいとは思わなかった。
なんでだろうな。
◇◇◇
卒業式の帰り道、カズと2人でコンビニに寄った。
「サツキん家で二次会しよ!」
ということなのでお菓子などを買って帰ることに。
「おい。そんなポンポンとカゴにお菓子を入れるな。どうせ食い切らないだろ。っていうかさっき吐いたばっかだろ」
「吐いたらお腹空いた!いっぱい食う!」
やはりバカ。
そんなバカが元気よくお菓子を選んでいたと思ったら、ふっと姿を消した。
どこに行ったのかと店内を見回すと、ある棚の前でしゃがみこんで、そこの棚に並んでいる商品をじっと見つめていた。
「何見てんだ?」
「サツキ」
「何?」
「これ、買う?」
そう言ってカズが指差した方を見る。
0.01mmと書かれたちいさい箱だった。
「買う……?」
「そうだなぁ……」
「どうなん?」
「必要になるかもな」
「ふーん」
「あった方がいいな」
「なら、やっぱ買う?」
「とりあえず……」
「とりあえず?」
「買っとくか」
「ふ、ふーん……」
「なんだよ」
「別に……」
「…………」
「す、すぐ使わなくてもいいんでしょ?」
「そりゃな」
「念の為」
「念の為だな」
「使う時に無いと困るもんね」
「そうだな。あっても困らないしな」
「持っといて損は無い的な?」
「まぁな」
「どれ買うの?」
「いろいろ種類あるな」
「どれがいいの?」
「買ったことないし知らん」
「適当でいっか」
「とりあえず最初だし」
「いろいろ試していけばいっか」
「そうだな」
「……すぐには使わないけど」
「まぁ……使うかもしれないってだけだからな」
「そうそう」
「結局、使わないかもしれないし」
「買ったの使わないのは勿体無くない?」
「それは勿体無い」
「だよね」
「なら、ちゃんと使うか」
「……うん」
「勿体無いし、仕方ないな」
「仕方ないわー」
「…………」
「…………」
「それでどれ買う?」
「サツキ選んでいいよ」
「ならこれ買うか」
「それがいいの?」
「知らん」
「変なの買わないでよ」
「メジャーな奴だし、多分、大丈夫だろ」
「そうなんだ」
「それじゃ買ってくるわ」
「うん。買ってきて」
買った。
そして家に帰って、使った。
今日は俺とカズ。2人の卒業式だった。
幼なじみの親友で性格クソなアホガキとは恋愛には発展しないがいろいろとヤラかしてしまう 助部紫葉 @toreniku
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