チートマスター【転生神は逃げ出したい】

黒岩トリコ

西暦2023年 都内某所

午前2時。

守衛の警備員からの視線を浴びながら、俺はふらつく足でビルを出た。

コンビニで酒と弁当を買った俺は、満月を背に家路へと急ぐ。


よれよれの背広に、皺だらけのズボン。親父から就職祝いで買ってもらった革靴は、手入れもできず色褪せている。

所謂ブラック企業と呼ばれる会社で社畜生活を続けた俺は、疲れ果てていた。


(また転職活動するか?いや、どうせ次もブラックなんだ、俺にはもう分かるんだ)


疲労と空腹、それに慢性的な寝不足により、この時俺は正常な判断力を失っていた。


(もう……疲れた)


気付くと俺は、国道の車道に立ち尽くしていた。

辺りに横断歩道や信号機はない。


トラックの光に照らされる。


(トラックの運転手さんには申し訳ないことしちゃうな)


俺の姿を見て、恐怖で顔を引き攣らせながら急ブレーキを踏むトラックの運転手が、俺の見た最期の映像だった。

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