8真実は変わらない・・・話
俺の思っていた通り、鏡は王妃、つまり元白雪姫の部屋にあった。
直径1メートルほどの大きく綺麗な鏡。
鏡を前にして聞く。
「おい、鏡。この世界はどうなっている。」
王ではなく、自分の口調で聞く。
ー・・・・・・。
「おい、お前は何でも知っているんだろう。」
ー・・・。この世界は繰り返されている。親が子へ。子が孫へ・・・。あなた、つまり王の父君もその父君も同じことを経験されている。
鏡はゆっくりと話し始めた。俺は、何も言わず耳を傾ける。
ーあなたの体は誰のものか知りませんが、結末は本来変わらない。
俺の使命はどうなんだ!
「俺は何をすればいい?」
ーそれはお答えできません。ただもう始まっています。
「分かった。」
俺は部屋を後にして、馬に乗り、あの森へと向かった。
今回はなんとややこしいんだろう。
元白雪が王妃で、現白雪が殺されそうになっていて、白雪の世界が繰り返されている・・・。
うん、1回整理しよう。
元白雪は王子、今の王と結婚。しかし、前妻の子がいた。
その王女が自分より綺麗に育ったから殺そうとした。
しかしグリム版と同じように 狩人が王女を逃し、それを7年間 知らなかった。
それで最近生きていることを知り、老女に化け、白雪を2回も殺そうとして失敗している。 いくつか疑問点がある。
まず、小人が8人いる。
誰が白雪を救ったのか?
小人は、7人のはず。
そして、白雪は2回殺されそうになった時、どちらも小人に救われているはず。
グリム版では1回目は組紐で締められ 、2回目は櫛で頭を刺され殺されそうになる。本来は小人が救っているが、今回は小人が家に帰ってくる前に救われていた。
さらに 山火事があった。それは、おそらく小人に対する妨害だろう、と俺は見ている。
他に誰かいるのか?辺りを見回す。
もし転生者がいたとすると、必ず小人を妨害するはず。
物語を知っていれば、必ず。
一方、味方だった場合はシンデレラを守るはずだ。
つまり、この世界には、小人を帰らせないように山火事を起こした人物と、白雪を救った人物の必ず2人の転生者がいるはずだ。
もし小人が帰らなかったら、白雪は確実に死ぬ。それを知っている人物がどこかに2人いる。
ただ誰だ?誰に転生してるんだ?
いや、それも後々わかるはず。
それより早く向かわなくては。
俺は全速力で馬を走らせた。
今は昼。
きっとまだ家の近くにいるはず。
森の中を歩きながら老女に化けた元白雪の王妃を探す。
王妃を捕まえ、後に白雪姫とその夫になる王子に渡す。そしてグリム版通りに鉄のサンダルを王妃に履かせる。
それでめでたしめでたし・・・のはず。
転生者との戦はなくて済む。
「ガサガサガサ。」
誰かが歩いてくる音がする。背を低くし様子を見る。
「くそ、何であの女は死なないの。もう3回目よ。」
老女のような、しわがれた声。
やっぱり王妃だ。
そしてまた白雪を殺そうと、今度は毒りんごで殺ったんだ。
俺は前に飛び出した。
「もうお前は終わりだ。大人しく捕まるんだ!」
「お、王。ど、どうしてここに!」
「そんなのは関係ない。早く捕まるんだな。」
剣を構え、相手の様子を見る。
「何で。何で私じゃなくあいつなのよ。なんでなんで!」
爪を噛みながら言う王妃。
「全て、あんた、いえ、あいつのせいよ。あいつさえ、いなければ。」
そう言って、おもむろに何かを取り出した。
自らの足下にそれを投げつけると、突然、白い煙が出てきた。
そして、煙が消えた頃にはすでに王妃はいなかった。
大丈夫だろうか。転生者を信じて?
白雪姫が生きていると思っていいのだろうか?
森を彷徨い、ようやく小人の家にたどり着いた。
しかし、中には小人たちがおり、何やら暗い雰囲気。
覗いてみると、死んだかのように眠る白雪姫がいた。
いや、あれは死んでない。何となく分かる。
じゃあ、王妃はどこへ?
家の周りを歩いていると血痕を見つけた。
その跡をたどっていると、遠くから言い争いをしてる声が聞こえたので、急いでその場に向かう。
近づくにつれ、だんだんはっきりとやり取りが聞こえてくる。
「な、なんであんたが・・・。」
「それが正義だからよ!」
「や、やめ、ギャーーーー!!!!」
悲鳴をあげる王妃。
広々とした場所に、血溜まりを作り倒れる王妃。そして、それを見下ろす女性がいた。
俺、いや、王はその女性の名を呼んだ。
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