魔女と約束
彼女との水族館デートの約束をした日の帰り道、電車に乗ってうとうととしていると――
カツッ、カツッ、カツッ......
ヒールのような固いものをが車両の金属床を突く音が近づいてくる。
「やぁ、久しぶりだね」
突然降ってきた声は彼女のものだった。
僕の視界には彼女の厚底ブーツ部分だけが目に入る。
その声に僕は思わず上を向くと彼女と目が合った。
彼女の瞳に映る僕と僕の目が合った気がした。
それぐらい彼女との距離が近かった。
「うわぁっ」
「その驚き方、傷つくなー」
そう言いつつも、どこか愉快そうな顔をしている。
「今から行くよ」
言葉を続けると電車が止まった。
彼女に手を掴まれて電車を降りる。
手を掴んだまま、目の前の彼女はカツカツと進んでいく。
僕の前を行きながら。
「最近女の子とよく一緒にいるみたいだねぇ」
と僕の方を見ずに言う。
「今、なんでって思ったでしょ。魔女はなんでもお見通しなのさ」
彼女に言い当てられて一瞬、ドキッっとしたけれどそう言えば魔女だったと思い気持ちを持ち直す。
彼女といろいろ話しながら歩いていると、この前行った病院の前に着いていた。
「さぁ、今日は修行パートだよ存分に励みたまえ」
少し可笑しそうに彼女はそう言った。
(修行パート?どういうこと?)
僕が悩んでいる様すら彼女のとっては面白いことらしい。
僕の表情を可笑しそうに見るとまた手を引いて。
「さぁ、行くよ」
僕の手を引いて病院の中へ入っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます