虚《うそ》と実《うつつ》-鬼-

@haruwo_tokiwo

第1話

寒月の触るる口唇くちびるより緋色

遠火事を みやるまなこ熱傷やけどする

燃え尽きし焔の痕の 空 真冬

嘘あまた夜をいくへに重ね着す


ひひらぎ挿す 鎧ふ吾もまた金の

春の灯の 狂女が点すあかねいろ


左眼の記憶消えゆく春 眠し

花筏 揺られ向かふは 黄泉 ぢごく


標本の ひかり 集める朝 立夏

追ふわれほどけゆく闇 初螢

影二つ 泥のボートでゆく先は


茉莉花が淫らな白を汚す指

ぼんやりと空を見ている 蟬の殻

氷みづ 骨はガラスと降る欠片かけら


たうがんが ぬるりとろりの 道行きを

蔦蔓 纏ひし夜に咲くや爪

破裂すは 車輪が下の 檸檬とか


ソナチネに 重ねし罪を ピラカンサ


枯れ尾花 くるまれている 昨日の死


ネクタイを外す指以て抱く狐火










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