第14話 彼のチート感が増している件。
またも報告すべき内容が増えた件。
それらは全て終わった事なのだけど、まさかそのような意図があってハルカを巻き込んだとするなら、ミズキの思惑は亜神候補ではなくハルカに宿っていた魔石にあったかもしれない。
(先ずはアンデッドとなった前の肉体を調査)
その間にハルカ達へと私が行った事案を説明した。神が一柱になった事に驚かれたけどね。
それでもしばらくの間は、邪神ミズキの名を残しているので魔人種にとっての影響は無い。
むしろ邪神だと知ってから、魔王共のやる気が満ち満ちているのは、謎に思えてしまった。
(所詮は邪神の眷属ってことなのかもね・・・)
可能ならば私の方で滅ぼす事も考えたが、
(下手に敵を減らすと、人族種同士で戦いを始めるから、必要悪として残すしかないかな?)
人族種が内戦を引き起こさないための必須道具として残す事とした私だった。そういう意味では邪神ミズキの名も不在女神として残す必要もあるだろう。神格は私よりも下だけどね。
(邪神ミズキではなく堕女神がいいかな?)
そのままの名前だと、ミズキ流と被ってハルカに余計な被害がおよびそうだし。
ちなみに、その間のハルカとアキラは受付に移動してハルカの再登録を行っていた。
ハルカがアキラの側妻になった件だけは、まだ打ち明けていないのだが、ギルドカードに記されるから、あとで怒られるかもしれない。
(その時は誠心誠意お詫びしようかな?)
しばらくするとアンデッドの詳細情報が上がってきた。
(ふむふむ・・・え? 加護は魔石昇華? 以前見た時は限界突破だったよね。まさか、加護に偽装がなされていたの?)
内容を読み解くとハルカが死亡すると魂と肉体を含めて高品質の魔石に変化するとあった。
(確か、高位の魂が魔石化して、それを神が捕食すると神格向上の効果があったよね? もしかしてそれが狙いだったの? だとするなら)
同じ神格だった私を飛び越えてこの世界の本当の神になろうとしていたのだろう。だが、処刑事案で私の眷属達が掠め取ろうとして許せないとなって、あの世界に案内してあわよくば?
(可能性の範疇だとしても堕女神なら遣りかねないね。根底はどうあっても邪神だから・・・)
一先ずの私は二人に与えた加護に魔石化不可という名の不死属性を追加した。これは悪人となった場合であっても、魔石化しない制限だ。
悪人となったら私の神炎で浄化すれば元に戻る的なオマケ付きでもある。裸になるけどね。
そのうえで堕女神に対して、
(装備砂化を追加っと。堕女神が悪い事をしたら装備品が砂化して素肌を衆目に晒す罰だね)
改心させるつもりの罰を与えた。
改心せず変態に化けそうな気もするけれど。
ギルドカードの文字化けは元世界の単語となるから、気づいて怒り狂いそうな、気もする。
毎度毎度身につけた装備が砂と化すから買い換えが必須となりそうだよね。堕女神ってば人体生成は得意でも物質生成は下手だったから。
私はどちらも得意だったけど。
一先ず、それらの措置を終わらせると、
「俺がハルカに惚れられていたなんて・・・」
登録を終えたハルカとアキラが戻ってきた。
アキラの表情を見る限り怒りはなく困惑が表に出ているだけだった。ハルカの登録も無事に終わったようで、清々しい表情となっていた。
「そうよ。ずっと好きだったんだから」
「そ、それって何年越しの恋なんだ?」
「物事がついて、直ぐかしら? 一時期は例の件もあって諦めていたけど・・・」
「おぅ。フレアよりも重い思いだった」
「女性に重いって酷くない?」
というより、ハルカは告白でもしたかのような甘酸っぱい乙女の顔だったけど。
客観的に見ると私もあんな表情なのかな?
私自身、恋愛経験が無いから暴走するようにアキラへ感情をぶつけるしか出来ないけれど。
「いや、フレアはアレな重さだし」
「そちらの意味だったの? 体重かと思った」
「ハルカは軽いだろ? 重いっていうのは」
「はいはい、分かったわよ。口に出さないで」
「お、おう」
私がアレな重さって女神だからだよね?
身分差的な意味で、重いって事だから。
(アキラからそう言われるとショックかも)
とはいえ、本当の事なので受け入れるしかないわけで。私自身、アキラ以上の男性に出会った事は無いし、身も心も捧げるつもりでいる。
だから、それらを含めてアキラだと、広い心で受け入れる覚悟を決めて、今があるのだ。
(それでも乙女心的にはちょっと辛い・・・)
ハルカがアキラへと口に出すなと言ったのは私の表情に気づいたからだろう。
二人は私の待つ席に戻ってきても、
「アキラは私達を受け入れてくれるだけでいいの。アキラの気持ちが芽生えるまで待つから」
何故だが口論だけは止めなかった。
私達って事は私の気持ちを代弁してくれているのね。現状では、ある意味での政略だから。
アキラとの関係を維持するために結んだね。
「待つって・・・身体的に大丈夫なのかよ?」
「二十六年もの間、温めてきた思いよ。そう簡単に拭えるわけがないでしょ? それにね」
ここからは私も会話に参戦する事にした。
私は改めて周囲に遮音結界を張り、
「私もハルカもアキラも肉体的には十代のままだから気にしなくていいよ。私は十五才前後で二人は十八才前後の肉体で固定したからね?」
ハルカが発する前に割り込んだ。
「「そんなに若くなっているの(かよ)!」」
何故か若返りにツッコミを頂いたけど。
「魂で言えば二十九才で固定なんだけど、肉体だけは見た目年齢で作った身体だからね?」
「ああ、それで。ハルカが無茶な若作りをしていたわけではなかったんだな・・・」
「それで妙に・・・無茶な若作りって何よ!?」
「年齢的に無理していないかって思えてな」
「そ、それを言われるとクルものがあるわね」
「だろ? 精神年齢だけはアラサーだぞ?」
「・・・」
アラサーと聞いてハルカが何故か沈黙した。
それは聞きたくなかった的な表情だった。
だから私は空気を戻すため、
「私もアキラの気持ちが芽生えるまで待つから気にしなくていいよ。どのみち、私達が長生きすることだけは、確定しているんだからさ」
自身の気持ちを吐露しつつアキラに猶予を与えた。ハルカも猶予を与えているし、しばらくの間は待ちでもいいだろう。一応、婚姻してるからいずれは夜伽を行う日もくるだろうけど。
それを聞いたアキラはバツの悪そうな表情でボソッと呟いた。
「お、俺が、ふ、不甲斐なくて、すまん」
聞けばアキラも恋愛未経験者らしいから立ち位置で言えば私と同じだろう。ハルカだけは一歩リードしているが、相対するアキラがコレなので引き続き温める事に尽力するしかないね。
私とハルカは顔を見合わせ笑顔で返事した。
「「いつまでも待ってるから気にしないで」」
§
その後の私達は簡単な依頼を眺めて冒険者としての仕事を受注した。突発的な魔物狩りと買い取りだけは達成履歴には入らないからね。
依頼を受けて成功すれば履歴に含まれる。
元々ランクアップするつもりは無いので、
「成功と失敗を混ぜれば問題ないよ」
鉄等級で居続ける秘策を伝授した。
鉄等級で居た方が無難なだけだしね。
「なるほど、それで良かったんだ」
「だからフレアは鉄のままと?」
「銅以上になると、しがらみがあるからね」
「あー、分かる。分かるわぁ〜」
ここで少しでも等級を引き上げると、王侯貴族というしがらみが、降って湧いてくるから。
銅等級は豪商と低位貴族が依頼を出す。
銀等級からは中位貴族が依頼を出してくる。
金等級からは上位貴族が依頼を出してくる。
白金等級は王族やら各国首脳の依頼だね。
鉄等級だけなら指名依頼がないため支部の依頼票だけを思いつく限り片付ければいいのだ。
「あとは突発的な買い取りで解決だね」
「それで資金不足にはならないんだな」
「こ、こんな裏技があったなんて・・・」
「ドンマイ、ハルカ」
なお、ハルカの前情報は処刑確定時に破棄されていたようで再登録は順調に進んだらしい。
実際には破棄ではなく、別人扱いになったからなんだよね。以前は名字付きだったからね。
(ハルカ・ミズキという名の勇者だったから)
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