低い空のゆるい空気

河村 ポチ

低い空のゆるい空気

暑い夜 ぬるいシャワーで髪漱ぐ 甘い香りは、自分のために



オクターブ離れて僕ら いつまでも 近づけないまま相似のメロディ



均一に揺らぐガス燈 僕たちの影を映して世界切り取る


火傷しない熱さの缶コーヒー この気持ちは本物じゃない


影二つ 雨の予感の低い雲 カバンの中に傘は一つ

折り畳み傘では防げぬ雨が打つ 右の肩と左の鼓動


その声が手錠をかける 簡単に 拘束されて君しか見えない


一言で封をしていた恋心 暴いてしまう君は残酷


コンビニのフライドチキンの残り香と、ぬるいビールの味のキス


今夜だけ 名前をよんで 嘘でいい その声帯を私が震わす


腕の中とろけるように眠りたい ラブラドライトみたいな深夜


すべて嘘 朝目覚めたらあの声も 全部泡に溶けてなくなる


このこいは、ゆめかまぼろし。 いまだけは。だいてていいの。だってゆめだし。


目が覚める 炭酸水で流し込む 覚めかけの夢 冷めかけの熱



君の目が濁って笑う 網膜の奥の声とか知りたくないし


僕のこと見てはくれない君だからその目はずして独り占めしたい


カッターで切り取るように僕たちの夜を捨てたい 傷ついたって


ストゼロと惰性で過ごす 涙腺のかたく締まって泣けない夜



だまってちゃ、つたわらないの、わかってた。くちにだしたら、こわれることも。





おろしたての靴が痛くて 君のこと どうでも良くなる月曜の朝

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

低い空のゆるい空気 河村 ポチ @sk_bee_8_55

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る