第15話 お友達になりましょう!
私は背筋を伸ばして皆に向き直りこう言った。
「噂ですもの。噂なんていくらでも尾ひれも背びれも胸びれも付きますわ」
(さっきも言ったなこのセリフ。)
驚いた顔で皆が私に目を向ける。
「リリー様がそのような方で無いのは私が補償いたしますわ。それに私だって、色んな噂を立てられてましてよ。我儘で傲慢で嫉妬深い令嬢だって。幼児体形で頭が悪いくせにディーン様の婚約者なのを鼻にかけて、ディーン様に近づくものに嫌がらせをする意地悪な悪役令嬢なのですわ。そうではありません?皆様」
私がゲームのアリアナ設定を読み上げるように言うと、皆は慌てた。
「でもアリアナ様は全然そんな方じゃ無かったわ!。クラスで一番秀才だし」
ジョージアがそう言うとレティシアも
「そうですわ!。それは、・・・以前少しキツい事を仰られたこともありましたが、子供の時の事ですもの、皆さん大げさに言ってるのですわ!」
そう言ってくれる。
(ありがとう、レティシア。前はアリアナがした事ごめんね)
私はにっこり笑って
「噂なんてそんなものですわ。故意に悪意のある噂を流す方も残念ながらいらっしゃいますしね。リリーさんの魔力が強かったり成績が良い事を妬む方や、ディーン様やパーシヴァルが優しくされる事を気に入らない方がいらっしゃるのでしょう。・・・ねぇリリー様?」
「は、はいっ」
「私達、お友達になりましょうよ」
「えっ?」
「リリー様が良い方なのは私良く分かってますもの。リリー様さえお嫌じゃなければ私、お友達になりたいです」
「アリアナ様!そんな嫌だなんてこと。私のようなものにそんな風に言って下るなんて・・・。私、嬉しいです!」
「良かった。ふふ、私も嬉しいです」
私は泣いているリリーの手を両手で包んだ。
(あ~、ヒロインの手。細くて白くて柔らか~)
私が邪な事を考えていると、
「あ・・・、あのリリーさん。先ほどはごめんなさい」
「わたくしも、リリーさんに対して恥ずかしい態度をとってしまいましたわ」
ミリアとレティシアがもじもじしながらそう言った。その様子を見ていたジョージアが愉快そうに笑いながら言った。
「あはっ、それじゃ皆で友達になれば良いんじゃない?。色々誤解も解けたんだしさ。そろそろ昼食だから皆でここでお昼をたべましょうよ」
「あ、ありがとうございます!」
(そういえば、ジョージアはリリーに対して何も言ってなかったなぁ・・・)
きっとジョージアも噂で人を判断したくなかったのね。ジョージアは男の子みたいにさっぱりしているし、女同士の諍いとか嫌いなんだろうなぁ。
私たちはリリーも一緒に昼食をとる事にした。
ピクニックの昼食は最高だった。
さすが貴族の学校だけあって外で食べる食事も豪華!。簡易テーブルの上に並べられた色々な料理を皿にのせて、皆それぞれの場所に持って行って食べている。
(凄いなぁ、この料理全部運んできたの?)
良く見ると簡易的にコンロが作られていて、ここで調理されたメニューもあるようだ。どうやら学園のシェフも何人か来ていたらしい。
私達は色々とお皿にとって木陰のピクニックシートに戻った。丁度ノエルとクリフも戻ってきていた。
「あれ?、リリー・ハート嬢じゃない?。君も一緒に食べるの?」
ノエルがそう聞いた。
「はい、アリアナ様に誘っていただいたんです。よろしくお願いします。」
「こちらこそ宜しく!。できたら君の魔力の話を聞きたいな」
ノエルの顔がパッと輝き、目に見えて嬉しそうだ。ヒロインの魅力は攻略対象じゃなくても有効なのだろうか?
ちらりとクリフの方を見ると、彼は全く興味無さそうに、もう自分が取ってきた料理をむしゃむしゃと食べてる。
(ふむ・・・)
ゲーム上のリリーとクリフは2年生に同じクラスになってからのストーリーだったから、逆に今は何も起こらないのだろうか?
(クリフ・ルートは重いからね・・・。出来ればヒロインには他の人を選んで欲しいもんだけど・・・)
横目で二人を見ながら私も昼食を食べ始める。フォークで小さなミートパイのような物を突き刺して口に放り込んだ。
(ん!)
私は目を見開いた。
(あ~~~美味しいっ!!。この世界に来てから食事だけはマジ最高だわ!)
私は蟹クリームコロッケみたいなものや、ローストビーフのようなものを食べながら幸せを噛み締めていた。
そしてふと気が付くと、何故かクリフが笑みを浮かべてこっちを見ていた。
「なんでしょう?クリフ様」
もぐもぐしながらそう聞くと、
「いや、随分と旨そうに食べてるなと思って」
そう言ってクスクス笑っている。
「美味しいですもの。そりゃ美味しそうにたべますわ」
「その小さい体のどこに入るんだろうね?」
「だから大きくなるために食べているんです」
そう言うとクリフはまたぶはっと吹出した。どうやらツボに入ったみたいで、ずっと笑い続けている。
(なんて失礼な)
美形じゃなかったら蹴飛ばしてるぞ。
リリーはノエルとジョージアも交じって魔力の話をしている。
ミリアとレティシアはテーブルにデザートを取りに行ったようだ。
(私もそろそろデザートを取りに行こうかな・・・)
ビュッフェテーブルの方を眺めながらふと思った。
(そう言えばピクニックのハプニングイベントはどうなるんだろう?)
ほとんどがアリアナが発端となって起こるイベントだから、私が何もしない限りこのまま何も起こらないんじゃないだろうか?。それにリリーだってここに居るから他の令嬢達のイジメにも合わないだろう。
このまま平和に終了するなら、それはそれで良いよね?。リリーと攻略者の距好感度は上がんないけどさ・・・なんても思っていた時だった。
「きゃーっ!」
「危ない!。馬がっ!」
突然の悲鳴や叫び声に驚かされた。
慌てて振り向くと、馬車を繋いだままの馬がこちらに向かって暴れながら走ってきているではないか!
(な、なんで?!)
「きゃあ!」
叫び声をあげるリリーをノエルとジョージアが庇うようにして木の方へ逃げた。ミリアやレティシアも悲鳴を上げて転げる様にして逃げている。
そしてジョージアが私に向かって叫んだ。
「アリアナ様、逃げてっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます