第3話 いじめの場面?

 (あ~もう、なんでこういう場面に行き会っちゃうかな~・・・。)


 私は中庭に向かう渡り廊下にしゃがみこんで隠れ、そして頭を抱えた。


 私の名前はアリアナ・コールリッジ。一応、公爵令嬢。でもってここはアンファエルン王立学園である。


 この国のほとんどの貴族の令息、令嬢が集まる学校だ。彼ら彼女らは皆、13歳になるとこの学園に通う事になっている。もちろん遠方の者には、豪華な学園寮も用意されているのだ。


 で、どうして私が隠れたかと言うと、あるもめ事が目に入ったからである。


 広い中庭の木が生い茂って人目につかない一角で、それは起きていた。女生徒達のキャンキャン響く声が、渡り廊下の壁越しにも聞こえる。


 「どういうつもりですの?あなた。庶民のくせに、パーシヴァル様やディーン様に慣れ慣れしくして!」


 「そうよ、そうよ!お二人の優しい心に付け込んで、媚をうって気に入られようとしてるんでしょ。」


 「ほんとに、育ちの悪い方って恐ろしいですわぁ~。礼儀やたしなみというものを、まるでご存じないんですものぉ~。」


 そして皆でクスクスと意地の悪い笑い声をあげた。


 だけどそれに対し、りんとした、なんとも美しい声が反論する。語尾は少し震えていたが、真っすぐな良く通る声だった。


 「私、そんな事していません。誰にも媚など打っておりません。」


 (おお、さすが!声まで美しい!)


 私は少し伸び上がり、廊下の壁の端から覗いてみた。


 声の主の名はリリー・ハート。今、建物の壁を背に4,5人の女性徒に囲まれている少女だ。顔は少し青ざめているが背をまっすぐ伸ばし、うつむくことなく立っている。その姿には気高ささえ感じた。


 「な、なによ!生意気ですわよ、あなたっ!」


 「そうよ、光の魔術を持ってるからって、偉ぶらないでよね、この庶民が!」


 反論したリリーに対し、女生徒達はいきり立った。


 (うわぁ、一人に対して数人って、まじありえない!。でもここで私が出ていくのはまずいよなぁ。)


 そう、私は目立ちたくないのだ!。


 (でもな~、こういうの見て見ぬふりって、かなりしんどい・・・)


  そう思っていると、リリーがまた反論する。


 「偉ぶってなどおりません。私はただ、この学園でしっかりと学びたいだけです」


 芯のある声ではっきりと言う。それが、女生徒達の気持ちを余計に煽ってしまった。


 「こ、この平民風情が生意気な事を!おだまりなさい!」


 女生徒達の一人が顔を赤く染め、手を上に振り上げた!


 (あ、だめだめ!これはもう、ほっとけない!)


 私は思わず飛び出して声をあげた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る