筆を取る理由: 自己主張と防衛のダイナミズム
水原麻以
書く理由は自己防衛
筆を取る理由: 自己主張と防衛のダイナミズム
私たちはなぜ書くのでしょうか。ある者はそれを創造の表現、語り継ぐべき物語、あるいは未知の領域への探索とみなすかもしれません。しかし、その根底にある動機は、一見、非常に自己中心的なものに見えます。それは自己主張と防衛、そして領域の確立という欲求から生まれるものです。
我々が書く理由は、一つに集約されるとするならば、それは"そこにキーボードがあるから"と言えるでしょう。この表現は、私たちが書くという行為を単なる機械的な行動として捉えるものではありません。それは、物語を紡ぎ出す、意見を述べる、または思考を整理するという自発的な行為を通じて、我々自身が存在し、自己を主張するための手段を提供する、その象徴的な意味を持っています。
書くことは、多くの場合、承認欲求からくるものと見なされます。確かに、他者からの賞賛や承認は強力な動機付けとなり得ます。しかし、それは全体像の一部に過ぎません。私たちが書く真の理由は、より深層に、より本質的な欲求、すなわち安全欲求に根ざしています。
人間は社会的な存在であり、その行動の多くは他者との関係性に影響を受けます。自己主張をしないと、我々は他者から無視され、踏みにじられ、結果として存在そのものが脅かされることになります。ここで言う"攻撃は最大の防御"とは、自身の立場を明確にし、自己の存在を主張することが、他者からの潜在的な侵害から自身を守る最善の策であるという意味です。
書くという行為は、この防衛的な側面を持っています。我々は自分のテリトリー、すなわち自分の考え、価値観、そして信念を守るために筆を取ります。それは、自分自身の内面世界を他者に示すことで、自分の存在とその価値を確認し、それを保護するという行為です。
そして、私たちは書きたいから書きます。それは矛盾した表現のように思えるかもしれませんが、それは我々が書くという行為の本質的な側面を捉えています。私たちが書く理由は、単に表現する欲求からくるものだけではなく、自己を守り、自己を主張するという欲求からくるものです。それは、私たちが自分自身の存在を認識し、それを確立するための手段なのです。
結局のところ、私たちは書くことで自分自身を見つけ、理解し、そして表現します。それは自己主張と防衛のダイナミズムが交錯する、人間の基本的な欲求の表現なのです。そして、それは我々が書くという行為を通じて、一つ一つの言葉とともに、自己の存在を創造し、守り、そして確認するための手段なのです。
筆を取る理由: 自己主張と防衛のダイナミズム 水原麻以 @maimizuhara
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