駄目駄目天使のシアワセカツドウ~どうして私がクビになったんだい?~

テルミ

第1話 幸せの押し売り、はじめました

// SE インターホンの鳴る音


「あれぇ? 私の勘だと居るはずなんだけどな……」


// SE インターホンの鳴る音


「頼むよ~、出てきてくれないと私も帰れないんだよぉ」


「ほんとなんだよぉ、怪しいものじゃないからさぁ」// 少し悲しげに


// SE ドアを開ける音


「おや、やっぱり居たじゃないかぁ! 」

「はじめまして、お兄さん。あなたに幸せをお届けしに参りました、天使だよ」


「……って、閉めないで!ほんとにあやしいものじゃないから!社員証出すから!社員証社員証……どこだっけ……」//慌てた感じで


// SE 鞄を漁る音


「天界ちほー株式会社ハッピーでいっぱい部門下っ端。わたくし、こういうものでございます」


「……え? 頼んでない? またまたぁ~お兄さんそんなこと言っちゃって……昨日ここで祈ってたでしょ? 」


// SE 近づく足音


「誰か俺を幸せにしてくれーって」// 耳元にささやきかけるように


「なんで知ってるかって? それはもちろん、天使ですから」// 少し楽しそうな感じで


「輪っか? まだ天使にそんな幻想を抱いているのかい?」


「輪っかなんてものはずいぶん前に廃止されたよ。光熱費もバカにならないし、なにより夜でも今は明るいじゃないか。天界にも経費削減ってものがあるんだ」


「羽根? それはたしかに昔はあったけど……廃止されたよ。あれのせいで肩こりが蔓延してねぇ、天界で暴動が起きたんだ」


「今の天使なんて、お兄さんたち人間とそう変わらないよ。どう?これで納得いったかい」


「渋々といった感じかな。まぁでも受け入れてほしいな」


「じゃ、私のお話もしたことだし、今度はお兄さんのお話」


「聞きたいな?」 // 楽しげで小悪魔的な感じで


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


// SE お湯を注ぐ音

// SE 足音

// SE 湯呑を机に置く音


「ご丁寧にどうも。 それで、お兄さんはそもそも、どうして急に幸せなんて祈ったんだい?」


「ふむふむ……仕事が終わらないし、上司に怒られるし、出会いもなくて、疲れ果てて……」


「……役満だねぇ」 // ぼそっと


// SE 鞄から取り出す音

// SE パソコンのキーボードをたたく音

「私からはいろんなプランが提案できるけど……これなんかどうだい?」


「御社爆破プラン!とか。安心してよ。事前に人払いもしておくし、御社には火災保険でお金も入ってくる」


「誰も傷つかないし、お兄さんは嫌な職場から解放される、どうだい?魅力的だろう?」


「おいおい、悪魔なんて呼び方はやめてほしいな。幸せを運ぶ天使ちゃんだっていうのに」


「でもたしかに、これだとまた始末書書かなきゃいけなくなるし……一度天界に持ち帰って検討しても良いかい?」


「……もう来なくて良いなんていわないでくれよぉ……」// 少し悲しげに


// SE バックを漁る音

「帰りのチケットどこだったかな……えと……たしかここに……」


「ん?なんだこの手紙」 // 少しいぶかしむように


「始末書まみれの君はもういらないからクビ!……ふむ」


「……ん?」


「ク、クビ!?」 // 驚いたように


// SE 玄関を開ける音


「ちょ、ちょっと待って! まだ締め出さないで! ちょ、もうちょっとだけ!」


「はぁ、はぁ……」


「その……なんというか……私クビになっちゃったみたいで……帰れなくなっちゃった」


「人間界に家?そんなもの用意してないし、社員寮なんてものもこっちにはないよ」


「どどどどうしてこんなことに……別に悪いことなんてちょ、ちょっとしかしてないじゃないか」


「お兄さん、お願いだよぉ~、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、おうちに居させてくれないかい?」 // 懇願する様子で


「大丈夫、大天使様にお願いしたら許してくれるかもしれないから、それまでの間だけ!」


「なんでもしますから!ごはんも作るし掃除もするし他にも……っと、」


「なるほど……?」 // 何か思いついたような感じで


「ねぇお兄さん、今新しいプランを思いついたんだけど、聞いてくれるかい?」


// SE キーボードをたたく音


「題して、私がお兄さんを癒してしんぜようプラン!」


「天界に帰るまでの間だけど、私はお兄さんの身の回りのことは何でもしてあげよう」


「疲れて帰った日にはとびきりの料理を作っておくし、その後も君の話を聞いてあげる。お兄さんがしてほしいことを私がやってあげるんだ。どうだい?魅力的じゃないかい?」


「だからお願いだよぉ! 君のためにもなるし、私のためにもなる、win-winっていうやつなんだ!少しだけでも良いからさぁ」


「とりあえず一カ月……なんて言わないから!にしゅう、いや一週間!それだけでいいからさぁ!」


「!!」 // とてもうれしそうに


「助かるよぉ!大天使様より慈悲深い君に感謝!」


「それじゃあ今日からよろしく頼むよ。お兄さん!……って、どうしてそんなに浮かない顔をしてるんだい?」


「こんな俺が幸せになれるのかな……って?」


「安心してくれたまえ、腐っても私は天使、それに……お兄さん」


「君には、幸せになる権利がある」 // 耳元で優しく語り掛けるように

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