第2話 探索からの初戦闘
「これが完全VRのフルダイブRPGか。なんかゲームじゃないみたい。」
温度感覚もあるし、風も感じるし、鳥の鳴き声も聞こえるし、現実とそんなに変わらない。ついに科学技術はここまで発展したのか。いやー、スゴいな。っと、VRの素晴らしさを感じるのは後にして
「まずは探索しよう。」
「マップは......目の前を2回タップでメニューが出てくるからそこのマップボタンを押して、と。おー、出てきた。とりあえず【南の森】に行ってみよう。」
おぉー、歩けた!走れ...た!いやー、もう最高。
「いやー、速いな。流石、AGI特化。」
そのまま森の中に突っ込み、探索を始める。
花の臭いがする。嗅覚まで再現するとは・・・ここを生活の拠点にしたい。
「ん?なんか動いた?うわっ!!」
突然、飛び出てきた何かを咄嗟に上体を後ろに反らして避ける。体勢を整えて飛び出てきた何かが跳んでいった方向を見るとそこにはウサギとキツネを足して2で割ったような生物がいた。
HPバーを確認できるため倒せるモンスターなのだろう。そう判断したアヤネは双短剣を構えた。
「かかっておいで。」
そう言うとそのモンスターは跳びかかってくる。
アヤネは冷静に左に体をずらして、短剣を降り下ろす。それではまだ倒せなかったらしく、赤いダメージエフェクトを散らしながら地面に着地した。もう1度同じ攻撃をしてきたから同じように短剣を降り下ろすと今度は倒せて
パリンッ
という音とともに消滅した。
「お、倒せた。うーん、思ったより火力が低い。まぁ、AGIに極振りだし仕方ないけどこいつ1体に2発当てないといけないとなると相当キツいな。おっと、また来た。えっ?次、3体同時!?」
3体といっても動きのパターンは全く同じなため落ち着いてれば余裕で対処できる。
2発で倒せると分かったアヤネはこの3体は全てハサミのように短剣を使い、倒した。
「うん、まだまだ余裕だね。」
すると次から次へと同じモンスターがやって来る。
「え?一気に増えすぎじゃありません?運営さん。もしかして倒したらダメなモンスターだった?」
今度は10匹、倒している途中に5匹追加で参戦してくる。アヤネは近くの木を蹴ったり、木に上ったり、と周りのオブジェクトも上手く使いながら順調に倒していった。火力不足で10分かけてようやく倒しきった。
<スキル:【釘付け】を取得しました。>
<スキル:【体捌き(回避)】を取得しました。>
<Lv.2になりました。>
「ん?スキル貰えた?えっと、なになに?」
【釘付け】
半径50m以内にいるモンスター全ての意識を自分に向ける。持続時間2分。1度使用後5分後再使用可能。
取得条件:10体以上のモンスターと同時に戦い、殲滅すること。
【体捌き(回避)】
回避する時に回避しやすくなる。
取得条件:1時間以内に30回避する。
「【釘付け】とか使ったら私、即死案件なんだけど......【体捌き(回避)】はその名の通りだね。`回避しやすくなる´ってあんまり役に立たないから正直いらないけどもらっておいて損はないか。」
「レベルも上がったし、もうちょっと奥まで行ってみよう。」
しばらくモンスターが現れない平和な探索をしていたがそれはもうおしまいらしい。
「グオウゥ」
「熊?強そう。【体捌き(回避)】は常時発動してるから使えるスキルは何もないし、殺ろうか。」
熊の懐に入り込むと2本の短剣を素早く動かし、6連撃を加えると熊の腹を両足でぶっ蹴ることで距離を取る。熊は体勢を立て直すと右腕を振り上げ、横薙ぎに腕を振るってきた。アヤネは完璧に間合いを取っていて攻撃は当たらない。そこでできた隙を見逃さずすれ違い様に4連撃を加える。熊は赤いダメージエフェクトを散らすがまだ生きている。そして振り向き様に腕を横に振ってくるがアヤネはその場でジャンプして回避すると空中で半回転し、着地時に4連撃加える。熊はパリンッと音を立てて消滅していった。
「ふぅ。疲れるなぁ、熊。まだ時間あるし、もっと奥に行こう。」
しばらくモンスターの相手をちょこちょこしながら奥へと進んでいると、ゴンッと見えない壁にぶつかった。
「イタタタタタタ。ここがフイールドの端かな。景色続いてるのに。しょうがない、引き返そう。」
目の前には広大な海が広がっているがここより前に行けないということで引き返すアヤネだが、`通ってないところを通ろう´と思い、森の中を突っ切っていた。
「行きは道みたいなのあったけどここは草に花に木と植物三昧だね。歩きにくいよ。」
邪魔そうに植物を見ていたアヤネだったがちょっとした違いがあることに気づいた。
「あれ?この木の周りだけ色が薄い。なんでだろ。」
不思議に思い、木に触れるとログインしたときのように眩しい光と一瞬の浮遊感がアヤネを襲った。
「あえっ!?」
目を開くと、目の前には草も花も木もなくなっていた。代わりに洞窟のような場所に転移させられた.....のだろうか。
「急のことでビックリしたけどダンジョンみたいで楽しそう。」
ダンジョンかもしれないという期待を持って洞窟らしき場所を意気揚々と歩き始めた。
戦闘もなく、ただ歩いていくと広い部屋に着いた。そしてこの部屋の中央に人が立っていた。
忍者と言えばって感じの頭巾に服を身に付けていて目元だけが見えるようになっている。忍者も戦闘体勢に入ったためアヤネも戦闘体勢を取る。すると、忍者が突然、3人に増えた。いきなりで驚いたが、3人のうちの1人に高速で近付き、胴を切りつけた瞬間、その忍者は霧散した。その直後、後ろから殺気を感じた。
「っ!!」
咄嗟に短剣をクロスさせ、敵の短剣を受け止める。1呼吸置いて体勢を立て直すと瞬時に忍者の懐に潜り込み、切りつける。またも切った瞬間に霧散した。いくつかの手裏剣が飛んでくるが、それらを危なげなく躱しながら考察する。
「うーん、分身ってところかな?これは骨が折れるね。なら分身させなければ勝ちってことだよね。」
そうと決まれば、すぐに加速して忍者に急接近していく。懐に入り込もうとした瞬間、突如として火がカーテンのように現れて3連続バク転で回避する。
「ひぇー。なに?これ。どうせどこかに消えたんだろうけどめんどくさいなぁ。」
アヤネの予想通り目の前にいた忍者はその場におらず、この部屋の端の方に移動していた。
「もう1回近づいてみようか。」
同じように突っ込むと今度は火ではなく水が出てきて、回避を余儀なくされた。
「今度は水?土とかないよね?不安になってきたんだけど。」
すると、今度は忍者から近づいてきた。一直線に走ってくるためアヤネとしてもありがたく思い、短剣を構えると忍者は突然、後ろを向いた。
「ん?何してるの?」
そのままバック走で近づいて来る。なにかある、と確信したアヤネは同様にバック走をして距離をキープすることにした。そしてもうすぐ端に着くと思ったとき、忍者が消えた。否、忍者と自分の場所が入れ替わった。
「ツ!!」
後ろを向くと飛び上がって斬りかかってくる忍者を視認した。ここにいては斬られると思ったアヤネは忍者の真下に行き、忍者の腹に合計で8連撃を与えた。
赤いダメージエフェクトが飛び散り、忍者は距離をとる。
「今ので終わってほしかったんだけど.....」
と言ってはいるが忍者本体に攻撃を当てられたのはこれが初めてだったため余程HPが低くない限り、今ので死ぬことはない。だが、忍者のHPゲージがあと4分の1まで減っていることからこの忍者のVITとHPは少ない方だと言える。それを確認したアヤネはちょっと喜んでいた。
「よし、もう1回出来れば良いんだけど......流石に無理かな。」
次はもう1度自分から突っ込むと、忍者は手裏剣を3つ投げてきた。
それくらいなら避けれる、と回避すると後ろで爆発が起きた。手裏剣が地面に刺さったことで爆発が起きたのだろう、と推察してそのまま突っ込む。
手裏剣を投げてから少しの間、硬直したことが忍者の敗因だった。
アヤネは忍者が硬直している間に6連撃加えると、忍者はパリンッと音を立てて消えていった。
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