ブラコン妹の親友が、妹に隠れて部屋にいる話

白メイ

第一章 1年の時を経て

第1話 お兄さんとの日常

 俺(羽島はしま 健一郎けんいちろう)はアパートの管理人とイラストレーターの仕事をしながら細々と生きていた。順風満帆とまでは行かなくても特に不便を感じることもない普通の生活だ。強いて言えば一つ、


「お兄さん、涼香すずか帰ったすか?」


 アパートの一室、ベッドの布団を亀の甲羅のようにして頭だけを出した状態の彼女(安達あだち 真緒まお)が今日も俺の部屋に入り浸っている事くらいだ。


「あぁ、帰ったよ。今日は母さんたちの旅行のお土産を届けるだけだったみたいだしな」

「そうっすか、了解です」


 妹が帰ったことを確認すると布団にくるまるのを辞め、俺のいる昇降機付きの机の前で足を止めると。現在描いているイラストの画面を覗きこむような形で顔を寄せてきた。


「お兄さん、又こんなエッチな絵描いてるんすか…私がいるのによくやるっすね」

「これは仕事だ。あとお前に見られたところで恥ずかしくないっての」


「えぇ、そんなこと言って私がこの絵と同じポーズしちゃうかもっすよ?」


 俺が今描いているの絵は抱き枕カバーのイラストで、可愛い女の子が一糸纏わぬ姿で恥ずかしそうに大切なところを両手を隠しているポーズのイラストだ。


「生憎だが俺はお前に興奮しないから大丈夫だ、そして遠慮しておく」


「つれないっすね、現役jkが裸になって好きにさせるっているのに、お兄さんは性欲ないんすか?それか二次元しか愛せないとかいうやつっすか?」


「はぁ、お前ってやつは。さすがの俺にだって性欲ぐらいあるし、三次元も好きだよ。でも――」

「でも?」


「俺は…お前が大切だから気軽にはできないっていうか、妹の親友だから遠慮してるんだ」

「そ、そっすか…大切…へへ」


 真緒は頬を軽く赤く染めながら、大切という言葉に嬉しそうに俯いていた。

 いつもは挑発してくるような発言や行動をしてくるが、こういうところを見ると俺の好みのタイプではないが少しばかり可愛いと思ってしまう。


 俺は内心照れるのを隠すように話を変えようとした。


「あー、そんなことより今晩何作ってくれるんだ?」

 赤面する彼女をあまり見ないようにしつつ、今晩のメニューを聞くことに。

 すると、いつもの表情に戻って、


「今晩はっすねー、お兄さんの大好きなハンバーグです!」

「お!嬉しいな。…それにしてもいつも悪いな俺の飯と部屋の掃除とかしてもらって」


「ほんとっすよ。生活力皆無なお兄さんが今も健康的に過ごせてるのは私のおかげなんすからね!私をあがめるっす」

「いや、本当に頭が上がらないです、ありがとうございます」


 俺は床に頭を擦り付ける勢いで感謝を伝えると、満足したのかじゃあ準備始めるっすねーと言って炊事場に向かった。エプロンを付ける真緒の後姿を見ながらふと声が零れてしまった。


「……なんか通い妻みたいだな」

「ん?なんか言ったすか?」

「いや、何も」


 真緒が振り向いて聞いてきたが、小声で聞こえなかったようで一安心。


 こんな毎日がいつまで続くのか少し気になるところだ。

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