① 要るのか序章

 いきなり読むのつまづきますね、これがあると。


 序章、プロローグ、前説、はじめに、謎ポエム

 エトセトラetc……



 ファンタジー映画の冒頭

 ひっくーい声でなっがーい世界観のモノローグぶっこんでくるのありますね。

 自分、ああいうのはまず早送りで飛ばします。


 あれをですね、小説なんかでやられるとツライ。

 読む方はしんどいんです。


 最初から説明的な内容をどーんとやりたい。

 はじまるぞーって演出で盛り上げたい。


 気持ちは書き手としては痛いほどわかるけれども。

 読み手に回ると180度回頭です。



「ダムキング王国王歴732年。王オーウ三世突然の死により王国内の三大勢力、ビッグ公爵とラージ公爵とヒュージ公爵が覇権をめぐり───」


 この後続く続く、何千字ものバックボーン設定のくだりが。


 しかし読む方は


「そういうのは進行の上で、ちょっとずつ織り交ぜてくれれば」


 なんですよ。


 読むほどに自然に、知らない間に物語世界のピースを少しずつ得ている。

 これも引きこむテクニックなんじゃないかなと。

 

 ちょと主題とズレますが、よくあるスキルや魔法なんかのルール解説もそれ。

 ゲームの説明書読まない、チュートリアルも跳ばす身からすれば言わずもがなで。

 遊んでたらそのうちわかるから……ってね。



 

 次に。


 長尺な物語───

 ファンタジーで言うと戦記モノとか英雄の生涯だとか。


 冒頭、主人公の逆境づくりのためにアクションイベント起こしたりしますよね。

 内乱なり敵国攻めてきたなり。


 自作でもやりたい! なーんて考えてると

 頭の中に映画的な映像がぶわー出てきて、そりゃーもうテンションだだ上がり。



 陰影の利いた石造りの城内

 走る騎士の鎧から鳴る金属音、飛び交う弓、彼方で上がる火の手


 煤けた髭面イケメン王に、胸めっちゃ開いたドレスの王妃が登場

 ただならぬ表情、緊迫の空気

 ついに玉座にまで敵がっ

 生まれたばかりの我が子を忠臣のおじいに託したところで

 王と王妃に凶刃グサーッ

 退場っ


 赤子抱えて森の中を走るおじい

 しかし追手がっ


 おじい、ついに断崖に追い詰められてっ

 赤子ごと谷底の川へばしゃーんっ……



 さあ、重厚な何かが幕を開けるっ

 ……ほんまに?


 これね。

 実は映画や漫画など〝画で観るから〟いいんであって。

 文字に起こす場合は問題が多い。


 だって、主人公不在の情景描写だから。

 感情を置くポイントが無い。



 導入部分のテンポと緊張感を上げたいから

 登場人物の素性、背景描写やイベント詳細

 よくわかんない固有名詞など

 なるべく避けて書いていく。


 そうすると

 まだお話の中身を知らない中、読み手にしてみりゃ


「どこ/誰/何」


 これから読み進むのに必要な基本情報が、ぼやけて上がってこない結果に。

 サンプルに上げたようなモーションだけは伝わるけれども。


 この冒頭場面は

 映画で言うなら美術さん

 漫画家なら画力がモノを言う場所───


 物語全体を覆う『空気感』や『様式美』を一気に見せて引き込むところ。


 どんだけ凝った看板を出すかっていう。

 それを字だけで伝えようってんですから。


 逆に言えば

 文章の力だけでどこまで読み手の映像補完ができるかっていう

 作者の腕の見せどころかもしれまんが。


 文字だけで絵コンテを切るみたいな。



 以上。

 序章の存在が、読み手の自分にどうつまづくのか、でした。

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