死ぬほど抱きたかった爆モテ陽キャ同級生に泣くほどハメられてます。
@tsuraraturatura
第1話 絶対に言わないけど。
俺、相沢裕貴は男が好きだ。中学まではみんなと同じでクラスの可愛い女の子とか、人気アイドルが好きで、まさか自分が同性愛者だなんて思ったことはなかったけれど。きっかけは一之瀬達也だ。一見細っこいのに案外しっかり筋肉は付いていて、色素薄めの猫っ毛と少し釣り目気味だけど真ん丸な目が印象的なあいつ。誰にでも優しくて成績も良く、スポーツもなんでもこなせるあいつを無意識に目で追うようになっていたのはいつからだっただろう。気付いたら好きになっていた。
だけど、告白するつもりはない。だって男同士だし……それに、あいつには彼女がいる。色が白くて、細くて、それなのにおっぱいがデカい、男の理想を詰め込んだような彼女と廊下ですれ違うたび、なぜだか胸が痛む。
俺があいつを好きなように、あいつにも好きな女がいる。その事実を知ったときはショックだったけど、今はもう慣れた。そして、今ではもう諦めている。それでもあいつへの想いを捨てきれない俺はあいつの姿を詳らかに脳内で思い出しながら夜に一人で自身を慰めるのが日々の日課となってしまっている。
「あー、ねみ。」
昨日うまくイケずに就寝したのは4時くらいだったから眠い。教室の隅っこで小さくあくびをする。そのすきにちらりと達也の方を見る。女の子に囲まれて談笑している達也はまるで少女漫画のメインキャラだ。
ふいに教室の入り口の方を見た達也が誰かに向かって手を振った。彼の目線の先にいたのは彼の彼女だった。彼女の方も嬉しそうに手を振りかえす。
幸せそうに微笑むあいつの顔は邪の一片も感じられないほど無邪気で、こんな醜い感情を押し殺している自分をかき消してしまいそうだった。あの二人の間に入り込む隙間なんかないってわかっているのに、どうして俺はあいつのことを好きでいることをやめられないんだろう。
ふと、達也が振り返ったから慌てて目を逸らして、ノートを取るフリをする。あいつがこんなに近くにいるのに勉強どころではないけれど、男にジロジロ見てるなんて気付かれたら、なんて考えるだけでぞっとする。きっとあいつはあの太陽のような顔を曇らせ、それでも厳しい言葉を投げかけることはなく、ひっそりと俺の前に現れなくなるだろう。それは俺が考えられる事態の中で1番避けたいことだった。
「お、相沢!また勉強か~?」
俺の存在に今気づいたといわんばかりに素っとん狂な声をあげ、達也はこちらへつかつかと向かってきた。
「この真面目くんめ!なに?数学?」
と俺の肩に手を添えて勝手に教科書をペラペラめくる。
「うるさいなぁ。お前もテスト勉強しろよ。」
肩に感じる体温にドギマギしながら、声が上擦らないように細心の注意を払ってそう返す。
いつも思うけど、こいつは距離感が近すぎると思う。こんな風に触れられると勘違いをしてしまうからやめてほしい、なんて言えないけど。
「俺はいいの!だって直前に相沢に教えてもらうから。」
そういいながら達也は両腕を俺の首に回した。
「はぁ?もう教えてやんね。赤点取ってしまえ。」
と乱暴に吐き捨て、肩に回された腕をどかす。
「え~。ケチ!でも、相沢はなんだかんだで助けてくれるの知ってるかんな~。」
とか言ってヘラヘラ笑うコイツは見れば見るほど可愛くて、愛おしくて、もうどうにかなってしまいそうだった。
「おーい!たっくん。もう行くよ~。」
鈴の音のような可愛らしい声が教室に鳴り響いた。
「おー。じゃーな!相沢。またネ。」
そういうと彼はカバンを抱えて教室を飛び出した。さっきまで賑やかだった教室はアイツが消えた瞬間、しんと静まり返ってしまった。
こちらをチラチラ見ていた女子も、退屈そうに声のトーンを下げた。やっぱりあいつは女の子にモテるんだなと痛感して勝手に心を痛める。顔は可愛いし、スタイルもいいし、俺みたいなのとも話してくれるし。まあ、あたまはあんま良くないけど。
そう心の中で毒づいてみるものの、彼がいなくなった途端に明らかにテンションが下がっている自分も大概だと思う。
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