幽霊になった彼女と俺

ruy_sino

第1話 会いたい

 高校2年になってから約3ヶ月ほど経った。

明日から夏休みに入るからか、周囲の人達はどこに遊びに行くか、夏祭り等を話していた。

 「久堀は〜…やっぱごめん。」

 「変に気を使わなくていい…そっちの方が失礼だろ逆に。」

「あぁ、本当ごめん…そんなつもりなかったんだ。」

「まぁ俺も少し意地悪した。こっちも悪かったな」


 久堀裕太(くぼり ゆうた)

それが俺の名前だ。

俺には恋人がいた。


名前は鈴木麻奈(すずき まな)

中学2年の時に俺が告白してokを貰いそれ以来ずっと付き合っている。


 本来なら今年も麻奈と過ごすはずなのだが…今年からはもうそんな事も2度とない。

 高校1年の冬、デートしていた俺らに突如車が突っ込み車に轢かれた。相当なスピードで後ろには壁と言うことで、相当な衝撃が俺達を襲った。運転者は急な失神によりハンドル操作のミスによって事故は起きた。


 俺は咄嗟に庇ったが、彼女の当たりどころが悪く病院に運ばれた直後に亡くなってしまった…俺も致命傷だったが、神様のイタズラか俺は一命を取り留め、リハビリも終え

無理な運動こそ出来ないものの、普通に生活するぐらいまで回復した。


「俺だけ残ったって…生きる意味なんてない…」

俺は、あの日以来人と関わるのが苦手になった。

 周囲からは哀れみ、妬み…それが堪らなく苦痛だった…

「可哀想…」

「俺だったら自分の女死なせねーなw」

「てかあの子DVとかしてたらしいよ?」


最近では変な噂までもが一人フラフラと歩き回っている。


「今年からはもう彼女の居ない日々を過ごさなきゃ行けないのか…」

 何度も自殺を考えた…だが、直前になって彼女の笑顔が頭の中に浮かんできて、まだ死ぬのは止めようと、踏み止まってウダウダしている俺は、きっと覚悟のない腰抜けなのだろう。


「じゃあ明日から夏休みという事で、各自気をつけて過ごすように以上。」

 リュックを背負い帰宅する。


電車の揺れに体を任せてながらのる。

「はぁ…少し眠くなってきた…」

少しだけ目を瞑ることにした。



「ッハ…」

ガバッと体を起こし目を覚ます。

「どこだここ?」

周囲を見渡すと、沢山の花に包まれている丘のような場所で、不思議なところだった。

 だが不思議と見覚えはあった…

「電車の中で寝ていたはず?」

その時だった、ずっと聞きたいと思っていた声が聞こえた。

「やっほ〜久しぶりだね?あれ?どうしたのそんな顔して〜せっかくのイケメンが勿体無いよ?まったく。」

「え?どうしてお前がここに…」

俺は、膝から崩れ落ちた…

死んだはずの彼女…もう2度と見えないと思った彼女が今目の前にいる。

「どうしてって言われても…なんとなく?」

この曖昧な返事の仕方彼女そのまんまだ…

「俺…あの時からずっと…」

ポロポロと目から大きな雫が垂れ落ちてきた

「ちょっと、ちょっと〜泣かないでよ」

「だって…2度と会えないと思っていたから…」

「私もこうしてお話しする事が2度と出来ないと思ってたから、ちょっとびっくり。」

そう言いながら笑った笑顔を見せる。


 あぁ…何度も見た笑顔だ。

優しくて何もかも包み込んでくれそうな、そんな優しい笑顔。


「おっと〜そろそろ時間みたい…私もそっちに行けたら良いけど…」

「時間?」

「そう!ここは本来君みたいな人間が来る所じゃないからね。本当久しぶりに話せて良かった。じゃあね。」

少し悲しそうな顔をしながら僕の背中をグッと押した。

「ま、待って!まだ何も!!」



「ッハ!」

目を覚ますと電車の中だった。

「夢?夢にしては鮮明に覚えている。」

『次は〜次は〜』

駅員のアナウンスが聞こえ降りる駅に到着するところだった。

 「久しぶりにいい夢見たかもな…」

ピンポーンピンポーン

ドアが開き俺は、電車を降りた。



家に着いた俺は、すぐさまベットに横たわった。

「明日から夏休みかぁ〜」

そう…明日からは夏休み。予定も何もないただ部屋でダラダラと過ごす1ヶ月だ。

 「確か…親もいないんだっけ。面倒だなぁ〜」

親は、旅行に行くらしいが俺は断ったため

父と母二人で行くらしい。

 母親には適当にご飯でも作りなさいと言われたが、作る気力すらわからない。

「もういいや…とりあえず今日はもう寝よう。」

俺は、瞼を閉じる直前もう一度麻奈に

      『会いたい』

と心の中で叫びながら目を閉じた。




「起きて〜おーい?まったくよく寝る癖は治ってないなぁ〜おーい!」

 また聴きたかった声が聞こえる…幻聴?

「う、うー…ん」

俺は重い瞼をゆっくりと開けた。

瞼を擦り周囲を見渡す………??

「夢…?」

「夢じゃないよ〜現実君がいる世界だ」

頭の整理が追いついていない…なぜならそこに死んだはずの彼女が空を浮いて

    目の前にいたのだから…


 


今にも消えてしまいそうな日々を必死に

もがきながら不確定から確定にしようと

    掴み取ろうとする物語だ…

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