第7話 訪問&尋問

「好きなところどうぞ、って言っても裏路地なので座るところ限られていますけど」


拠点へと招待を受けてくれた人たちを案内し、いつも通りの拠点に到着する。作業との板、寝るための簡易テントに薄暗い明かり。到着すると同時に彼女たちの顔は若干引き気味だ。いやまぁ確かに日常生活に欠かせないものが無いのは確かであるが。


「あなたはこれだけで生きていたんですか?」

「そうですね、自我がついてからなのでざっと9年くらいですね。この生活にもある程度慣れてきています」

「きゅ!お前は苦しくないのかよ」

「苦しい苦しくないの問題ではなく、この生活でしか俺を生かせてくれないんで。正直、獣人族や人間にすら会った事ないです」


俺の悲痛な顔を見る女の子と青年、少し悲しそうな目をしている。すると、女の子は決心したように俺のを見つめだした。


「すいません、1つお願いをいいですか?」

「いいですよ、伊達にここで9年生活です。なんでも申してください」

「1度だけ、ステータスを見せていただけませんか?」

「お前正気か!」


ステータスを見せてほしいと願う女の子、しかしそれを疑うかのように青年が言い返す。女の子は手を強く握り、汗がにじみ出ている。まぁ、別に俺はいいんだが。俺はステータスを開き...


「どうやって見せるんだ?」

「え、いいんですか?」

「まぁ別に広めても俺にデメリットないので」

「おいおいまじかよ」


俺の回答が予想外なのだろう、目を開き驚いた様子を見せる。そんなか?と思いながらも俺はステータスをくまなく探した結果、右下の方に「ステータス共有」という文字があった。俺は間髪入れずのタッチすると、おそらく見えたのか女の子は俺のステータスに釘付けになっている


「ちなみに、君の名前は?」

「あ、言ってませんでしたね。ルーナと言います」

「俺はアーロンだ」

「ん、短い間ですがよろしくお願いします」


礼儀を見せ、少しでも危害を加えるつもりはないと見せながら俺はステータスを見せる。ルーナは舐めるように、アーロンは眺めるように俺のステータスを見始めた。


すると、徐々にルーナの額は汗ばんでいき顔が曇りだしてきた。アローンも驚きを隠せずに何なら少し震えてるようにも見える。もう大丈夫だろうというタイミングで俺はステータスを閉じ、感想を聞く。


「どうです?満足できましたか?」

「.....何ですか、あのステータスの量は」

「多分だが、特殊スキルにあった『スキル強奪』のおかげだろう。攻撃力の数値ステータスも1000越え」

「私が鑑定しても見えない理由が分かった気がします。『鬼神化』なんてしたら私たちじゃかなわない気がします」


顎に手を当てながら真面目に考察する2人。別に普通だと思うが、まぁ横から口を出すこともないだろう。俺は立って食料を貯蔵している箱を開け、合計11人くらいの食料を手に取る。パンやクラッカー、大切な時にしかの食べないと決めている肉を引っ張り出た。


「それ、『黒曜パン』ですか?」


と、ルーナが指しているものは俺が最後に手に取ったパンの種類。「はい」と端的に答え口に含み前歯でかみ砕く。これうまいんだよなぁ~、少しぱりぱりしていて顎の鍛え替えがあるんだよ。俺は顔をほころばせすぐに2口目に突入した。


「なぁ、あれって食べると歯が砕けるって言われている『黒曜パンだよな」

「そのはず、ですが.....」

「食べたいんですか?」

「いえ!遠慮しときます」


食い気味に否定され俺は手に取った『黒曜パン』を口にした。ん、やっぱりうまい。これに塩があったいいんだけどなぁ。俺にとっては塩は高級品、しかも一昨日使い切ったばっかだから次の収穫まで時間がかかる。はぁ、と少しため息をつき味に飽きつつある『黒曜パン』を食べきった。


「あれ、鎧の人たちは?」

「さっき、他の人たちを探すって言って裏路地を出ていきましたよ」


せっかくもてなす準備をしていたところなのに、いいや!明日俺が食う!全部食う。俺は食料をしまい、研究途中のスナイパーライフルに手を付ける。いい所だったから切りのいいところで切り上げると決めつつ作業台の近くに座り研究を始める。


「そういえば、あの銃ってどうやって使ったんですか?パステル王国では解読不可能とされていたんですけど」

「?あぁ、ショットガンですか?ハンドガンですか?あの時は生きるのに必死でしたからね。銃を研究しないと生きていけませんでしたから。知りたいんでしたら教えますよ。ハンドガンは片手で打てるのが利点でして、マガジンから入る銃弾というもので攻撃します。引き金を引くと同時に中で魔法陣が発動して...」

「もう充分です!」

「は、はい」


ルーナの強い声で俺の解説は止められ、何ならため息すらつかれてしまった。俺はまじめに解説したつもりなのだが、分からなかったらしい。まぁ人それぞれ知識量は変わってくるから仕方ない。俺は銃の説明をやめて、ついでにスナイパーライフルの研究も手を止めた。


「ルーナさんは」

「ルーナでいいです。あと敬語も外してください私もシリルと呼んで敬語を外す」

「え、いいですか?」

「いいって言ってる。何なら私かのお願い」

「お、おう。そういうなら外させてもらう」

「お!じゃ俺も俺も!」


俺らは敬語を外し、俺は1度作業台から体をルーンに向けた。しっかり俺に何かを聞こうとしている顔に俺も真剣に答えないとな。俺は近くにあるコップに手を取り水を飲み干す。少し緊張するため稼働数が多くなっている心臓を無理やり押し込み俺は口を開いた。


「で、何から話す?」

「魔法について聞きたい」

「魔法?別に魔法なんて誰でもできるだろう」

「じゃあ小さい火だして」

「え?....はい」


俺は疑問に思う思考を止め、人差し指にほんとに小さい火を出現させる。ちなみにこれくらいになると俺も詠唱を考えなくても出せるくらいには成長した。俺が火を出すと、疑問の顔をしていたルーナはやっぱりと目を開いた。


「無詠唱」

「まぁ、無詠唱術式だし。ちなみに署名術式はできないぞ。まだ研究中だがもうそろそろだ」

「はぁ、もうこの際全部言ってしまおう」


そんなことを口にするルーナにアーロンは顔をむけ、「大丈夫か?本当に?」と疑問の声を寄せる。ルーナは「大丈夫です」と返答をし、俺の方を向いた。


「あなたは強いです」

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