短歌「妖怪びーる男」+「 初孫」=延命措置

妖怪老人びーる男

第1話 あるがままの人生か

寒き朝に この世に生まれ 今もなお 子どものままで 齢を重ねり

暑き日に 雨降りやまず 眼鏡橋 悲しき記憶 たどるつてなし


田舎みち 友らとわかれ とぼとぼと 心もとなく 一人旅立つ

金華山 鵜飼い眺めし 長良川 夢ふくらます 十八の春


初お江戸 右も左も 迷いみち されど固まる 思いをむねに

山手線 ぐるぐる回り いつ休む 人も人とて どこも満員


佐渡ヶ島 今は昔の 島流し 穏やかなりし 波も静かに

柏崎 帰宅急ぐも 地吹雪の 舞い狂う路 行く先見えず


新幹線 赴任の車中 報せあり 母危篤にて 急ぎ帰れと

ほほ笑みか わずかな仕草 期待しも 願いむなしく 涙しぼりし


故郷へ 転勤かなう 母の縁 旧き友らと 酒酌み交わす

何思う 天に上りし つれ添いに 語るがごとき 父の読経


親戚の 早うせんねと 妻もらう 梅雨入り前に 周りせわしく

跡取りは どっちやろかと めぐらすも 五体満足 健康ならば


暑き盆 妻待つ黄泉へ 父逝きて 小さき体 心が痛む

祖先より 相続するは いろいろな なき父母繋ぐ 我が家の歴史


早きこと わが子卒業 県外へ 自信あふれる 笑顔残して

時過ぎて 妻めとりしは 息子どの どこか寂し気 妻の横顔


コロナ禍が いつまで続く 身のまわり 収まる気配 兆し有りしも

終活の 備え今から ぼちぼちと 余命数えて ひとり頷く



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