2023 03 31

  昨年(2022年)の2月でした。友人のTから電話がありました。こんな話でした。


T 「いきなりの話やけど、ウクライナのことどう思う?」

私「こんな夜中に、こんな話か」

T 「キエフは陥落するんか?」

私「分からんけど、何とか持ち堪えるかもしれんな。それにしても、何でお前がウクライナの事を?」

T 「ナターシャ覚えとるか?」

私「ナターシャ? ああ覚えとるで、背の高いスラリとした若い娘で、べっぴんの」

T 「覚えてたか!」

私「お前がロシア人クラブで知りおうたロシア人のベッピンさんやったのう。今治にも二・三回か二人で来たこともあったのう。お前の奥さんから携帯で電話があって、主人を宜しくお願いしますなんて、お前は手を合わせてすがる様な顔で…」

T 「ナターシャはのう。あの娘はウクライナ人なんや」


      この辺りで、だいたいの話が分かったのです。Tは関西の老舗機械メーカーで三代目です。上場もしていて堅実な会社なのです。今は息子は四代目が社長で、会長になってます。Tは二十年前は夜の帝王でして、それも外人バーとか外人パブとかが大好きでフィリピンパブ、台湾クラブ、ロシア人クラブ等によく行っていた頃でした(今は糖尿病で夜の帝王は引退らしい)。


T 「ナターシャから電話があって、キエフが危ない。亭主は志願で出征しもたらしい。ポーランドから日本に行けると云うから日本に行っても良いかと云うから、かまへんで云うて返事してもうたんや」

私「それなら歓迎したらんかい。日本男児ここにありや」

T 「とは言え、色々あってひやひやもんやで」


  それから1年、先日Tから電話がありまして、ナターシャ(本名は長たらしいので忘れました)は、どうやらキーフにいるようで、安堵してるということです。

T 「なんか、近平とプーチンが会談したようで、またキナ臭い事になるのか心配してるんや」

私「お前が心配してもどうにもならへんで」

T 「それはそうやけどな。それにしても、プーチンのチンカス野郎、どうにかしろ」

私「すまんけど、この歳になると10時ぐらいで寝るんや。電話切るぞ」


  ハゲと糖尿と昔の愛人とで、悩みが尽きない早期高齢者がいるのであります。ちなみに、ナターシャは、たぶんスマホの写真では100キロ越えになっているらしい。子供は三人で15歳の女の子がナターシャにそっくりらしい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る