軍事救国評議会//二正面作戦

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 ──軍事救国評議会//二正面作戦



 軍事救国評議会に合流したシーの下にデモン・レギオン内に残していた潜入捜査官からの情報が届いたのはシーの逃亡から2日後のことだった。


「デモン・レギオンが核攻撃を企てている、と?」


「このアーセナルセクターを射程に収めた空軍基地内に戦術核が運び込まれたのをこちらの潜入捜査官が確認している」


 クリスティーナが尋ねるのにシーがそう答える。


「まさか我々も核攻撃で片付けようというのか」


「可能性としては。いずれにせよこちらもそれ相応の報復手段か、あるいは敵の核兵器の無力化を行わなければ敵に核攻撃におけるフリーハンドを与えることになる」


「確かに。核の一方的な所持は危険だ」


 シーの説明にクリスティーナが同意した。


「では、シンプルにやろう。運び込まれている核兵器を奪取する。それによって核攻撃を阻止すると同時に報復手段を獲得するのだ」


「それでいいかと。こちらからも情報面で支援する」


「では、作戦を開始しよう」


 クリスティーナは特殊作戦部隊を動員し、戦術核が運び込まれたという空軍基地の襲撃準備を開始した。


 大規模な空中機動部隊が編成され、統合特殊作戦コマンドの他にエデン統合軍、ジェリコ、MAGの部隊が作戦のために待機する。


「作戦目標はデモン・レギオン占領下のオーガスト空軍基地だ」


 クリスティーナが動員される部隊に向けて説明。


「ここに出力5キロトンクラスの戦術核が数発運び込まれている。我々はこれを制圧し、奪取する。そのことによって敵に核攻撃のフリーハンドを与えないことにする」


 核兵器を強奪することが作戦目標だ。


「奇襲が重要になる。敵に察知されれば敵は核兵器を使用する可能性がある」


 作戦は空中機動部隊による奇襲。ステルス機を利用して密かに接近して部隊を展開させ、核兵器を奪取して帰還する。


「では、諸君の検討を祈る」


 そして、作戦が開始された。


 軍事救国評議会によって動員された部隊が空中機動部隊がステルス仕様のパワード・リフト輸送機で出撃し、デモン・レギオンによって戦術核が配備されたオーガスト空軍基地を目指す。


『クーガー・ゼロ・ワンより全部隊。到着予定時刻ETAは予定通り0210。ドローンからの報告によれば対空火器AAAは存在せず。着陸に備えろ』


 オーガスト空軍基地に迫る軍事救国評議会の空中機動部隊が高度を落とし始めた。


『降下まで間もなく!』


『待て。何だあれは──』


 空中機動部隊がオーガスト空軍基地に強行着陸しようとしたとき地上から何かが空中機動部隊の作戦機に向けて飛来した。


 それは赤いエネルギーブレード──“赤竜”だ。


 “赤竜”が作戦機を次々に襲い、作戦機が撃墜されていく。


『クソ! 上空援護機に地上を制圧させろ! そして降下開始だ!』


 空中機動部隊は“赤竜”に脅かされながらも高度を一斉に落として部隊を降下させようとし始める。


「降下、降下!」


 空中機動部隊が降下を開始。地上に部隊が展開する。


「敵の戦車だ! テクニカルも多数!」


「畜生! 待ち伏せだ!」


 しかし、地上に降下した部隊は高度に偽装され、待ち伏せていたデモン・レギオンの地上部隊による攻撃を受けた。


 戦闘装甲車両AFVやテクニカルからなる車両部隊と大規模な歩兵の攻撃を受けて空中機動部隊は一気に追い詰められる。


「また上空援護機に支援を要請!」


「上空援護機は全滅しています!」


「なんだと!?」


 “赤竜”の攻撃によって12機存在していたバルチャー攻撃機の部隊は壊滅しており、空中機動部隊を支援するものは存在しなかった。


 デモン・レギオンの部隊は徐々に軍事救国評議会部隊を追い詰める。


「撤退だ! 本部HQに撤退の許可を求めろ!」


本部HQより連絡です! 全戦域でデモン・レギオンの攻撃が始まりました! 我々は激しい攻撃を受けています!」


 そう、軍事救国評議会が核兵器の奪取を図ってオーガスト空軍基地を襲撃したとき、それを入れ替わるようにして前線でデモン・レギオンの大規模攻勢が開始された。


 精鋭をオーガスト空軍基地に投入していた軍事救国評議会は突然の不意打ちに一気に戦線が後退してしまう。


「前進です! 敵の精鋭はこちらで拘束してあります! ここで勝利するのです1」


 前線で指揮を執っているのはシシーリアで彼女が軍事救国評議会への猛攻撃を命じていた。彼女の指揮下のデモン・レギオンの大部隊は軍事救国評議会の防衛線を食い破って突き進んでいく。


 これがファティマの言っていた二正面作戦だ。


 まずオーガスト空軍基地に戦線を作り、次に前線を活発化させる。それによって自分たちの数の利を生かし、軍事救国評議会に出血を強いるのである。


 その企ては見事に成功し、軍事救国評議会は混乱状態だ。


「テヘーロ中将閣下! 我々は全戦域でデモン・レギオンの攻撃を受けています!」


「核兵器はどうなった? 核兵器は奪還できたのか?」


「既に作戦に動員された部隊との連絡は途絶えており……」


「そうか」


 部下の報告にクリスティーナが深々とため息をつく。


「全ての部隊を投入してデモン・レギオンの進軍を阻止しろ。それからオーガスト空軍基地に向かった部隊を可能であれば呼び戻せ」


「了解」


 それからオーガスト空軍基地に向かった空中機動部隊に動きがあった。


 彼らの作戦IDを有するパワード・リフト輸送機が軍事救国評議会の占領下にある空軍基地に向かってきたのである。


「友軍が帰還したぞ!」


「無事に帰ってこれたか」


 戦友の帰還に基地では安堵の声が響いた。


 しかし──。


「待て! こちらの呼びかけに応答しないぞ! 警戒しろ!」


 そう、帰還したはずの空中機動部隊は空軍基地からの呼びかけに応じない。そのまま空軍基地に強行着陸するように降下してきた。


「タッチダウン」


「暴れまわるぞ」


 案の定、空中機動部隊は作戦IDを偽装したデモン・レギオンの部隊だった。バーゲスト・アサルトとイェニチェリ大隊を満載したパワード・リフト輸送機が次々に着陸して部隊を展開させていく。


「基地を制圧しろ! 後続部隊を迎える準備をするんだ!」


「派手にやるよ!」


 ガーゴイルとデフネがそれぞの部隊を率いて作戦の達成を試みる。


 空軍基地はそのまま陥落し、後方から次の部隊と武器弾薬が運び込まれてきた。このデモン・レギオン側の空中機動部隊の動きによって軍事救国評議会の戦略予備が後方に拘置されてしまう。


 軍事救国評議会はあらゆる場所で攻撃を受けており、数の暴力を振りかざすデモン・レギオンを前に部隊は分断され、包囲され、殲滅されていた。


「全軍にアーセナルセクターまで撤退を指示する。撤退を実行しろ」


「了解」


 戦線を整理するために軍事救国評議会はアーセナルセクターまで撤退。


 そこでデモン・レギオンとのにらみ合いを始める。


……………………

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