加速する混沌//核兵器
……………………
──加速する混沌//核兵器
「カイラさんのヴリトラ・ガーディアンズから未だに連絡がありません」
ファティマがデモン・レギオンの幹部たちにそう告げる。
グレースは入院中で代わりにガーゴイルが出席しており、他にはデフネ、シシーリア、キャスパリーグ、そしてジェーンだ。
「連中には核兵器の確保を任せたんだろう。大丈夫なのか?」
「あまり大丈夫ではないですね。エデン統合軍が有する核兵器がそっくりカイラさんたちの手にあることになりますから。もし、使用されれば大変なことですよ」
ガーゴイルが指摘するのにファティマがそう応じる。
「しかし、核兵器はそれを運用するプラットフォームが必要だ。ミサイルや爆撃機といったような。それはどうなっている?」
「ええ。ヴリトラ・ガーディアンズが巡航ミサイルを数発入手しているとの情報があります。国家保安委員会からの情報ですが」
「不味いな」
ジェーンはファティマの言葉に唸る。
「よって我々が核兵器のコントロールを手にする必要があります。それが使用される前に、です」
「動員するのは?」
「イェニチェリ大隊。デフネさん、お願いします」
ファティマがそう言ってデフネの方を見た。
「オーケー、お姉ちゃん。もし、ヴリトラ・ガーディアンズが通知を無視してこちらを攻撃してきたらどうする?」
「そのときはヴリトラ・ガーディアンズはもはや敵です。排除して核兵器を確保します。それだけですよ」
「いいね。やってやろう」
ファティマの言葉にデフネが嬉しそうに笑った。
「それではデフネさん。イェニチェリ大隊に出動準備を。迅速に核施設を制圧し、カイラさんたちから核兵器を奪還します」
「了解」
そして、イェニチェリ大隊が動き出した。
動員される兵士たちがハミングバード汎用輸送機に乗り込み、ハミングバード汎用輸送機はさらに空挺戦車などを搭載する。
『全部隊へ。作戦開始、作戦開始!』
そして作戦開始が命じられて一斉に部隊が動き出した。
バルチャー攻撃機4機とフサリア無人攻撃機を上空援護機としてファティマとイェニチェリ大隊が空中機動してエデン統合軍の核施設を目指す。
『まもなく
「降下に備えろ、野郎ども!」
ハミングバード汎用輸送機のパイロットの報告にデフネが叫ぶ。
そしてハミングバード汎用輸送機はまずはアーマードスーツを投下し、それから空挺戦車、イニェチェリ大隊の歩兵を展開させる。
「
「ですね。妙な感じです」
割と正面から堂々と乗り込んだにもかかわらず、核施設を制圧しているだろうヴリトラ・ガーディアンズからは抵抗はなかった。
MANPADSが飛んでくることも降下したファティマたちに迎撃部隊が差し向けられることもない。異様な静けさだ。
「進みましょう。警戒しながら」
ファティマたちは戦術級偵察妖精を展開させながら核施設に近づいていく。
「前方に機関銃陣地。他にも
「いきなり問答無用で交戦するのも考え物です。ここは私が話しに行ってきます」
イェニチェリ大隊の兵士の報告を聞いたファティマはそう言うとヴリトラ・ガーディアンズのものだろう陣地に向けて歩いていった。
「止まれ!」
「ファティマです! デモン・レギオンのファティマ・アルハザード! カイラ・クマールさんはどこですか?」
ヴリトラ・ガーディアンズの戦闘服を纏った兵士が陣地から警告を発し、それにファティマが手を上げて応じる。
「こっちだ。来い」
ヴリトラ・ガーディアンズの兵士はファティマを核施設内に案内した。
「よう、ファティマ。やっときたか」
「カイラさん。この核施設を制圧してから連絡がありませんでしたが?」
「そっちからしてくるだろうと思っていたからな」
ファティマが責めるように言うがカイラは悪びれずそう返す。
「では、伝えましょう。核兵器を我々の方に移してください。指揮系統から外れたあなたが核兵器を保有していることを誰もが危険視しています」
「断ったら?」
「無理やりにでも奪還することになります」
カイラがにやにや笑いながら尋ねるのにファティマははっきりとそう言った。
「交渉するつもりはないと?」
「交渉がしたいのですか?」
そこでカイラがそう質問し、ファティマが尋ね返す。
「ああ。交渉を求める。あたしが必要なものが与えられれば喜んで核兵器をそちらに渡そう。どうする?」
「まずはそちらの提案を聞きましょう」
「オーケー」
ファティマが応じるのにカイラが頷き、話を進めた。
「デモン・レギオンはエデンを征服するだろう。エデンは身内の争いでぐだぐだ。ろくに抵抗できてない。よってデモン・レギオンは戦後、エデンとゲヘナの双方で支配的な地位に就く。それは間違いないな?」
「ええ。そうなるでしょう」
「であるならば、デモン・レギオンにおいて私を高い地位につけてほしい。十二分に甘い汁が吸える場所だ。権力と金の両方がたんまりと手に入る地位が欲しい」
「それが望みですか?」
「他に臨むものはない。どうする?」
カイラは試すようにファティマを見る。
「お断りします。それには応じられません」
「そうかい。じゃあ、交渉決裂だ。死ね」
そこでヴリトラ・ガーディアンズのコントラクターたちがファティマに銃口を向けて一斉に引き金を引いた。
「エネルギーシールド!」
ファティマはエネルギーシールドを展開して銃弾を防ぎ、同時にスモークグレネードを投擲して敵の視野を塞いで撤退。
「お姉さん! どうする!?」
「通信妨害を! それからデフネさんに連絡を取って核施設を制圧します!」
「分かったよ!」
ファティマが叫び、サマエルが行動を開始。
ヴリトラ・ガーディアンズの通信が妨害されて彼らのC4ISTARが一瞬で機能不全に陥った。共同交戦能力を喪失したヴリトラ・ガーディアンズがばらばらに抵抗する。
「デフネさん! 突入してください! 突入して核施設の制圧を!」
『了解、お姉ちゃん!』
ファティマの合図で外で待機していたイェニチェリ大隊がヴリトラ・ガーディアンズが制圧している核施設の奪取のために突入。
「皆殺しにしろ!」
「迎え撃て!」
イェニチェリ大隊とヴリトラ・ガーディアンズの両方が衝突して戦闘が始まった。
デフネのイェニチェリ大隊は訓練され、実勢経験もある精鋭だ。だが、それはヴリトラ・ガーディアンズとて同じこと。
ここでものを言うのは装備の質の差だ。
優れた兵士は優れた兵器に勝るなどというが、実際のところはそう甘くない。特に装備が高度化した時代においては装備の質の差は勝敗に明確な影響を与える。
今回の場合は装備の質において優れていたのはイェニチェリ大隊だった。
「空挺戦車とアーマードスーツを前に出せ! 火力でねじ伏せる!」
「了解!」
デフネの指示でエデン統合軍から入手したドーマウス空挺戦車とヘカトンケイル強襲重装殻が前方に進出し、
「突入だ!」
……………………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます