ワールシュタット作戦//辛うじての帰還と生存
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──ワールシュタット作戦//辛うじての帰還と生存
ファティマがゼレール元帥の別荘内を銃声の方向に向けて急ぐ。
「ガーゴイルさん! そっちに向かっています! 状況を!」
『ウィッチハント部隊と交戦中だ! グレースが負傷! 指揮を引き継いでいる!』
「了解!
ファティマがそう言って進む。
銃声がかなり盛大に響いており、ファティマはその方角に向かっている。
「敵を視認!」
ファティマは遮蔽物に隠れ、同時にエネルギーシールドを展開しているウィッチハント部隊の生き残りを確認した。
「“赤竜”!」
そのウィッチハント部隊に向けてファティマが“赤竜”を放つ。
「新手!?」
「クソ、例のマギテク兵装か!」
“赤竜”に襲われたウィッチハント部隊の残余がMTAR-89自動小銃でファティマを銃撃するもファティマはエネルギーシールドでそれを防いでいる。
「クリア」
ファティマは数十分の戦闘ののちにウィッチハント部隊を完全に排除。
「ガーゴイルさん!」
「ファティマ! 来たか!」
そして、ファティマがガーゴイルに合流した。
「グレースさんが負傷したと聞きましたが……」
「ああ。応急手当てをしたがすぐにもっと高度な処置が必要だ。今、ダストオフを要請しているが
「では、輸送機の
「頼むぞ、ファティマ。このクソみたいな状態から脱出する」
ここでウィッチハント部隊の壊滅を察知したMAGがさらなる部隊を投入してきた。
『ガーゴイル! もうすぐそちらに着くが上空に敵のパワード・リフト輸送機多数だ! MAGの連中だぞ! 大丈夫なのか!?』
「どうにかするから、さっさと来い、ハーピー!」
『了解!』
救援にハーピーの操るナイトゥジャー汎用輸送機が接近。
「私が
「了解だ」
ファティマはMAGが送り込んできた空中機動部隊の迎撃を目指して
「サマエルちゃん。通信妨害を。私は迎え撃ちます!」
「分かったよ、お姉さん」
サマエルが通信妨害を開始。
「一気に片づけます」
エネルギーシールドとクラウンシールドが前方で融合して凝集し、テリオン粒子が有する破壊のためのエネルギーが集中した。
「シールドインパクト!」
そして、それが一斉に迫りくるパワード・リフト輸送機に向けて叩き込まれた。
膨大なエネルギーが叩き込まれたことでMAGの空中機動部隊は蒸発。残骸すら残さずこの世から消滅したのだった。
「クリアです」
「ハーピーが到着する」
ガーゴイルたちが合流し、そしてナイトゥジャー汎用輸送機が降下してくる。
『ガーゴイル、乗り込め!』
「ああ!」
ナイトゥジャー汎用輸送機にガーゴイルたちが乗り込み、ファティマも乗り込む。
「グレースさんの状態は?」
「出血している。止まらない。急いで医療処置を施さないと不味い」
「意識は?」
「ない」
グレースは腹部に銃弾を受けており、ガーゴイルが手当てをしているが意識が戻らない。出血が多いせいだろう。
『後方拠点到着まで間もなく!』
そして、ナイトゥジャー汎用輸送機が後方の拠点に到着した。
「負傷者がいると聞いている!」
「ミア! グレースだ! 少佐が撃たれた!」
到着と同時に待機していたミアたち医療班が現れる。
「処置室へ運べ! 急いで!」
グレースはストレッチャーに乗せられ処置室へと運ばれていった。
「結果を待ちましょう」
「ああ」
ファティマが言い、ガーゴイルたちが待機する。
「処置は終わった」
そしてミアが姿を見せた。
「少佐は助かったのか?」
「ああ。もう意識も戻っている。出血も止めて輸液を行ったから問題ない。エデンの医療従事者たちが協力してくれたおかげでもある」
「そうか。よかった」
ミアが報告しガーゴイルたちが安堵の息を漏らす。
「少佐は君たちに礼を言っていた。後で会いに行くといい。容体が安定したら面会を許可するつもりだ」
「ありがとう、ミア」
ガーゴイルたちは安堵した様子で解散し、次に任務に備える。今のような激戦下においてバーゲスト・アサルトのような精鋭には休む暇もない。
「カーター先生。よければ私の検査もしてもらえますか?」
「ああ。そうだな。そうしておくべきだ。来たまえ」
ファティマが言うのにミアが頷き、ファティマを検査機器が置かれた場所に連れていく。そこは拠点の近くにある病院でエデンの高度な検査機器が設置されていた。
「では、検査を始めよう」
主にファティマの体内のテリオン粒子に対して検査が行われる。
その結果は──。
「かなりテリオン粒子への置換が進行している。予想より早い。正直……」
「どうなのですか?」
ミアが言葉を濁らせるのにファティマがそう尋ねる。
「テリオン粒子が存在しなければ君という生命を存続させるのはおそらく不可能な状態にある。テリオン粒子への置換を食い止めても、ほぼ間違いなくもう君は助からない」
「そう、ですか……」
「だが、エリュシオンの技術なら何かしらの解決策があるかもしれない。希望を捨てないように。いいね?」
「はい、カーター先生」
そう言いながらもファティマの表情は暗いままだった。
「お姉さん……」
「サマエルちゃん。どうしました?」
「謝らなければいけないことがあるんだ……」
「謝る、ですか?」
サマエルがそう言うのにファティマが怪訝そうな顔をした。
「今日お姉さんを助けるためにまたテリオン粒子を使った。お姉さんの傷をテリオン粒子で修復した。多分、そのせいで……」
「いいんですよ。私は気にしません。けど、私はまだ本当に生きていると言えるのでしょうか……」
サマエルの言葉にファティマはそうひとり言うのみ。
「お姉さんは生きてる。生きてるよ。ボクと同じように……」
「そうですね。サマエルちゃんと同じなんですよね」
サマエルもまたテリオン粒子で構成される生命だ。
ファティマが自分の今の生命を否定することはサマエルの生命を否定することにもなってしまう。ファティマはそう思って頷いた。
「今日は少し休みましょう。疲れました」
「うん」
ファティマとサマエルは休憩に入り、ゆっくりと眠った。
その間にも戦況は動き続け、デモン・レギオンの力を借りたエデン民主共和党の勢力は拡大し、各地で降伏したエデン統合軍の部隊を組み入れながらその勢力をさらに拡大させいったのだった。
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