解放への道//前兆
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──解放への道//前兆
ファティマたちは無事にシシーリアの暗殺計画を挫いた。
「これでもう安全なはずです」
「ありうがとうございます、ファティマさん」
ファティマがシシーリアに報告し、シシーリアは微笑む。
「しかし、ただの暗殺計画だとは思えません。何かしらの行動の前の準備のようにも思われました。シシーリアさんを暗殺すれば混乱が生まれる。それを利用するような」
「そうですね。何か妙な感じがします」
「まだ警戒を続けておきましょう」
シシーリアの同意にファティマがそう言った。
「しかし、ファティマさんにはお世話になってばかりでしたね。あなたはのそのような点はとても好きですよ」
「……半年後に死ぬかもしれないのでは受け入れかねます」
シシーリアが再びファティマに対して好意を見せて、アプローチするのにファティマが渋い表情でそう返した。
「それよりも敵の狙いです。調べておきましょう」
「ええ。動員される部隊の規模や種類などから分かることもあるでしょう」
「では、それぞれの使える伝手を使って」
ファティマたちはゲヘナ軍政府の次なる狙いを調べる。
ゲヘナ軍政府支配地域に浸透している斥候たちが情報を集め、アリスのようなスパイが情報を高官から盗み取る。
それらの情報はゲヘナ軍政府に追跡できないようにファティマたちの下に届く。
「ゲヘナ軍政府は大規模な地上軍を動員しているようです。戦車や機械化歩兵部隊など。これまでのことを考えると奇妙な感じではあります」
「これまで大規模な地上軍を投入したのはジェリコだけですね。ゲヘナ軍政府はクレイモア空中突撃旅団のような空中機動部隊による索敵撃滅作戦を取っていました」
「彼らは本気なのかもしれません」
「というと?」
ファティマが言うのにシシーリアが尋ねる。
「私たちを殲滅するということですよ。地上軍によって確実jに包囲殲滅する。そのつもりで大規模な地上軍を動員しているのかもしれません」
そう、戦争において敵戦力に打撃を与えるのにもっとも意味があるのは包囲殲滅だ。
爆撃と砲撃だけで敵地上部隊を壊滅させるのは不可能だし、空中機動部隊による索敵撃滅も限定的。
その点包囲殲滅は確実に敵戦力に大打撃を与えられる。
しかし、そのためには大規模な地上軍が必要。今回動員されるような、だ。
「そして、敵は我々に正面からの戦いを強要するつもりでしょう。我々の正面戦に装備はフォー・ホースメンを除けば貧弱。ゲヘナ軍政府があらんかぎりの地上軍を投入すればかなり押されますよ」
「ならば、フォー・ホースメンに主力を出してもらう必要がありますね。それから正面の戦いを強いる敵を敢えて躱す方法がないわけではありません。特に敵の行動が分かっているときは」
「できることを全てしなければいけません。そうしなければゲヘナ軍政府すら打倒できずに終わってしまいます」
そして、ファティマたちは行動を開始。
「バーロウ大佐。敵が大規模な攻撃を企図しています。地上軍による攻撃です」
「ほう。で、俺たちにどうしろと?」
ファティマはまずイーグル基地に向かってバーロウ大佐に面会。
「敵が正面からの戦いを強いた場合に勝利できるのはフォー・ホースメンだけです。だから、協力してほしいのです。このゲヘナ軍政府の主力をこの戦いで撃破できれば勝利に繋がります」
「分かった、分かった。部隊を出してやる。戦車も機械化歩兵もだ。航空機も出してやるよ。それでいいか?」
「ありがとうございます」
「勝利したときの見返り頼むぞ」
「もちろんです」
こうしてフォー・ホースメンが戦いに加わることになった。
フォー・ホースメンはARM74主力戦車などの重装備を保有している。それらがフォー・ホースメン支配地域からデモン・レギオンの前線へと展開し、防衛準備を始めた。
「フォー・ホースメンは協力してくれます。我々はどうしますか?」
「敵が正面からの戦いを強いるならば敵戦力を分散させるのみかと。潜入している部隊にテロを起こさせゲヘナ軍政府側に対応を強いる。そのことで敵の正面戦力を減少させるというのはどうでしょうか?」
「可能なのですか?」
「ええ。グリゴリ戦線は今までそうやって戦ってきたのですから」
シシーリアがそう請け負う。
グリゴリ戦線はゲヘナ軍政府へのテロを繰り返すことで戦ってきた。
「しかし、敵が本当にテロに対応するかが心配ですね。今のゲヘナ軍政府を握っているのはルーカス・ウェストモーランド准将です。この男はゲヘナ軍政府支配地域の民間人の命など気にもしないでしょう」
そうファティマが指摘。
ルーカス率いるクレイモア空中突撃旅団はこれまで大勢の民間人を虐殺してきた。それが民間人に対するテロを防ぐことをするだろうか?
「テロの目標はゲヘナ軍政府の関係施設です。民間人は標的ではありません。ゲヘナ軍政府の駐屯地や
「分かりました。では、その方向で進めましょう」
ファティマたちはゲヘナ軍政府による大規模反転攻勢の時期をX-DAYとし、準備を進めた。フォー・ホースメンの地上部隊が展開し、グリゴリ戦線の後方浸透部隊が多数増強されて行く。
「とても大きな戦いになりそうだね、お姉さん」
「ですね。大きな戦いになりますよ。しかし、これに勝利してエデンとエリュシオンに攻め入ることができれば助かるかもしれないんです」
「そうだね……」
戦いへの意気込みを語るファティマにサマエルは小さくうなずいた。
「部隊の配置はおおむね完了。ソドムからも部隊を出すという話だったけれど」
デモン・レギオンの本部にはフォー・ホースメンから連絡将校としてグレースが派遣されていた。彼女が状況を説明し、同じく連絡将校のデフネを見る。
「そだよ。こっちからも部隊を出す。ここまでやるなら勝ってもらわないと」
「助かります」
デフネの申し出にファティマが感謝を伝える。
「では、備えてください。敵の攻撃に」
ファティマたちがそう備える中、ゲヘナ軍政府も動いていた。
「部隊は配置に就いたか?」
「はい、閣下。全部隊が配置に就き、命令待っています」
ルーカスが確認するのに部下がそう答える。
「よろしい。予定通りにアガレス作戦を発動する。全部隊に待機命令だ」
「了解」
そして、ゲヘナ軍政府側の部隊全てが攻勢計画アガレス作戦の開始を待つ。
『
命令が下ると同時に大規模な砲爆撃が始まった。
あらゆる口径の火砲が火を噴く。榴弾砲も、多連装ロケット砲も、巡航ミサイルも、あらゆるものがデモン・レギオンの支配地域に向けて叩き込まれた。
「伏せろ!」
デモン・レギオン指揮下のフォー・ホースメン、ソドム、グリゴリ戦線の将兵が塹壕に籠って爆撃をやり過ごす。
『キング・ゼロ・ワンより各車。前進開始』
ついにゲヘナ軍政府による反転攻勢が始まった。
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