第40話 エピローグ


 あれから少し経って、俺のスマホに吉野先輩からライムが届いた。佐々木先輩とのツーショットの写真だ。

 付き合っているかどうかはわからないけれど、先輩たちも、一歩一歩、前進しているようだった。




 ーーそして、俺たちも。


「あの~、雅貴?」

「なんだよ、若菜」

「あの、雅貴?」

「だから、なんだって」

「なんだって、って言える体制じゃないよねぇ?」


 俺は正式な彼氏として、今、若菜をベッドの上で羽交締めにしているところ。


 手首をクロスさせて顔の上のベッドに押し付けて。若菜の足と足の間に、俺の左足を入れて。若菜をまじまじと、上から見下ろしている。


「あの、恥ずかしいから、せめて電気だけでも、消して? お願い。お願いだから~」

「だーめ」

「うう」


 俺は若菜の首筋に何度も何度もキスをする。

 これで明日の若菜の服は、スカーフ確定だ。

 そして空いた左手で、ゆっくりとパジャマのボタンを外していく。


「あの、雅貴さん?」

「なんですか、若菜さん?」

「私、どんどん着る物がなくなってくのですが」

「ソウデスネ」


 若菜は少し潤んだ目で、俺を見上げる、かと思ったら、サッと横に顔を背けた。


「私だけ、ずるいよ。雅貴も……脱いで?」


 ……っほんっとに、若菜は……。

 俺は拘束する手を離して、仕方なくガサツにTシャツを脱ぐ。


「雅貴って、鍛えててかっこいいんだね」


 ーーやった!

 ーー前に若菜は、吉野先輩の筋肉を褒めてたからな。実は意地で筋トレしたんだ、俺は。その成果を今、可愛い彼女の言葉で聞いている。幸せなことだ。


「ねぇ、やっぱり電気、暗くしよ?」

「だから、ダーメッて」


「あと……」

「ん?」


「初めてだから、優しくしてね?」


 ーープチン、と、俺の中の何かが弾けた。


「んんっ!」


 ーーそこからはもう、大人の世界だ。

 俺が一方的に求めるかたちになったけれど……。


 俺と若菜は、初めて結ばれたーー。


 ◇


「若菜、身体大丈夫か?」

「ううん、大丈夫じゃない」

「どこ痛いの? やっぱり……」


 若菜は心臓に手を当てた。


「心臓?」

「うん。ここ、心臓がきゅうんとして苦しい」

 

 ーーほんっとに、煽ってるだろ。

 じゃなきゃ天然だ。……そうだ、天然だった。


「あのね、雅貴?」

「うん?」


「私、幸せだった。今までも。今も。きっとこれからも。彼女にしてくれて、ありがとう」

「ーー!」

「きゃあああ! 何でもう一度乗っかってくるの~?」

「若菜が悪い」

「ええ~」



 俺たちは、これから喧嘩もするだろうし、きっと波瀾万丈なことも起こるだろう。

 ーーでも、これだけは変わらない。


「若菜。今までも、これからも、ずっと愛してるよ」



       ーーエピローグ完ーー

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